円安基調の裏に日本の〝対米従属〟構造

1.財務省は覆面でのドル売り・円買い介入を行い、日銀は政策金利の引き上げをちらつかせるが、円安基調はびくともしない。なぜか。背景には、赤字国・米国に黒字国・日本が従う国際金融の構造がある。

グラフは日本の対外投融資、米国の経常収支(貿易収支と海外との利子配当など所得収支の合計)と円の対ドル相場の推移である。2012年12月に第2次安倍晋三政権が発足してアベノミクスを打ち出し、翌年3月に黒田東彦氏が総裁に就任した日銀が4月から異次元金融緩和政策を開始し、それまでの超円高是正に成功した。2020年までの日本のカネの流出と米国の対外赤字の規模はぴったりと寄り添うように推移している。

 

2.米国は世界最大の対外債務国であり、外部からの資金流入がないとドル金利を低めに抑えられない。米株価のブームも長続きできない。コンスタントに資金が流れ込んでくるからこそ、国内総生産(GDP)で表わされる実体経済が安定して成長軌道を堅持できる。慢性的な貿易赤字の米国経済は消費と投資の合計額が国内生産額を上回ることで繁栄し、世界の覇権国の座に居続けられるのだ。日本の対外投融資は赤字国・米国にとって死活的な意味合いがある。日本のカネは米国のみならず中国、欧州などにも向かうが、外部に出た円資金の大半は基軸通貨ドルに転換され、グローバルな資金循環の中で必ず米金融機関が関与する。2013年9月には訪米中の安倍首相(当時)がニューヨーク証券取引所で「日本はカムバック」と演説し、大喝采を浴びた。図を見る限り、安倍氏が首相を退任した2020年までは日本の対外投融資が米赤字をほぼ全面的に埋め合わせてきた。アベノミクスがドルの金融市場を支えてきたことになる。

 

3.21年以降は日本の対外投融資と米経常赤字の規模が乖離(かいり)し始め、米赤字の膨張に日本の対外マネーが追いつかないままになっている。ロシアによるウクライナ侵略が始まった22年2月からは、エネルギー価格上昇が加速し、同3月からは米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅な連続利上げに踏み切った。その大義名分はインフレ抑制だが、国際金融の観点からすれば米金融市場に世界のカネを吸い寄せるという意味合いがある。日本の対外投融資では米赤字を埋め合わせできないという事情が米大幅利上げをもたらしたとも解釈できるわけだ。日銀のほうは2016年2月からのマイナス金利政策を続け、日米金利差が大きく拡大する結果、投機筋は円売り、ドル買い攻勢をかけるので円安が急進行するようになった。昨年4月に総裁が植田和男氏に代わった日銀は今年3月にマイナス金利など大規模金融緩和を打ち切ったが、内需停滞のもとでは超低金利水準を維持するしかない。

対照的に、インフレ抑制を優先する米バイデン政権とFRBが強いドルを維持しようとする。ドル高・円安は続くのだ。

、「(兆円) 160- 140- 日本の対外投融資、 米国の経常収支赤字と円ドル相場 120 (11/円) 160 (左目盛り) 日本の対外投融資 米国の経常収支赤宇 100 150 80 140 60- 円ドル相場 (右目盛り) 130 40 120 20 110 100 90 2012 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24' 「データは付質、CEC、平信+相場は名長木020245 主名年来,2024年は5月13日時式 2024$ 注データは日銀、C EC 相場は名年 米国の経常収支赤字と円ドル相場 80 日本の対外投融資」というテキストの画像のようです