1.著者は東大の研究者、副学長。本書でも指摘しているように、事実関係として、東大は京大もそうだが、女子学生の比率が20%ほどと、学生の性別比率に極端に差がある。教員についても同じでしかも、現在でもサークルの中には、他大学女子学生は受け入れるのに、東大生女子は受け入れないものもあるらしい。本書では、東大のそういった現状について分析するとともに、歴史的に戦前史をひも解き、戦後史も明らかにしている。東大は、よく知られているように、終戦までは東京帝国大学で女子の入学を認めていなかった。終戦とともに占領軍の指示で女子学生を受け入れるようになった。当然、トイレなどのインフラは未整備で、そういった事情も本書で明らかにしている。

 

2.米国アイビーリーグの名門校のプリンストン大学をケーススタディしている。プリンストン大学が女子学生を受け入れ始めたのは1969年と東大よりも遅く、ご同様に、1991年まで女性の入会を認めないイーティング・クラブが存在したが、約40年かけて2010年には女子学生比率は50%に達している。その2倍の80年近くかけて、いまだに20%ほどの東大とは差がある。また、学生レベルだけでなく、2001年には女性が学長に就任したりもしている。本書ではプリンストン大学が経営方針として共学化を開始し、女子学生受入れを積極的に進めた点を強調している。要するに、東大でも、京大でもやれば出来るんではないか、というわけだ。

 

3.これも明らかな通り、東大だけで女子学生比率を上昇させることは限界がある。日本の国として、教育界全体として考えるべき要素も無視できない。本書の第5章では東大のあるべき姿、として、女子学生数の比率上昇のためのクオータ制の導入などについても検討されている。日本経済の大きな弱点は女性の管理職などへの登用が決定的に欠けていることであり、このポイントを理解せねばならない。経済面で女性の活躍が不足しているひとつの原因は大学における、特に、東大や京大といったトップ校における女性比率の低さも考えねばならない。