パソコンやスマートフォンなどのハイテク機器から自動車まで、ありとあらゆる産業機器に採用される半導体。製造では台湾や韓国などの後塵を拝する日本だが、製造装置では未だに大きなシェアを保持している。

半導体製造プロセスはシリコンウエハーに電子回路を形成する「前工程」と、パッケージや性能テストなどの「後工程」に大別される。今回は半導体の製造工程を解説しながら、日本の主要製造装置メーカーについて紹介する。

 
【前工程】日本の主な装置メーカーと主要装置
東京エレクトロン:薄膜形成装置、コータデベロッパー、エッチング装置
SCREENホールディングス:洗浄装置
ニコン:露光装置
キヤノン:露光装置
日立ハイテク:ウエハー検査装置
レーザーテック:フォトマスク検査

前工程ではシリコンウエハーに写真技術を応用し、回路形成と電気特性を付与する。

まずシリコンウエハーの表面にさまざまな材料の薄膜を作る「薄膜形成」から始まる。主な方法は原料ガスを熱などで堆積させる化学蒸着(CVD)や放電によってイオン化した材料をウエハー表面に衝突させるスパッタリングなどがある。

そのウエハーにレジスト(感光材)を塗布し、露光、現像を行う。この感光材の塗布と現像で使われる装置「コータデベロッパー」で日本の代表的なメーカーが東京エレクトロンだ。同社は米アプライドマテリアルズ、オランダのASML、米ラムリサーチに次ぐ製造装置の売上高第四位だ。

前工程で最も価値があるとされる「露光」に関してはASMLの一強だ。特に微細化の最先端である回路線幅5ナノメートルや3ナノメートルではEUV(極端紫外線)の技術が必須。現在、世界で同技術を実装できるのはASMLしかいない。

ASMLの装置(同社HPより)

露光は回路パターンの原板に当たる「フォトマスク」や縮小レンズを通して光を照射し、回路パターンをウエハーに焼き付ける。

写真技術を応用するため、ニコンキヤノンも同製造装置を手がける。ただEUVの開発競争に敗れ、ASMLにシェアを明け渡した。露光で使うフォトマスクの検査ではレーザーテックのシェアが大きい。特にEUVを光源に使う検査装置では、同社が100%のシェアを持つ。

その後、回路以外の不要な酸化膜・薄膜を除去する「エッチング」やレジストを除去する「レジスト剥離・洗浄」に移る。東京エレクトロンはエッチング、SCREENホールディングスは洗浄の分野で大きなシェアを持つ。

回路形成したウエハーには電気的特性を変える「イオン注入」やチップ内部と外部を電気的に接続する「電極形成」を行う。この工程の装置は米アプライドマテリアルズなどが主要メーカーだ。最後にウエハー上の一つ一つのチップに問題がないか検査するまでが前工程だ。

 
【後工程】日本の主な装置メーカーと主要装置
ディスコ:ダイシング装置
東京精密:ダイシング装置
TOWA:モールディング装置
アドバンテスト:テスティング装置

後工程は前工程のウエハーを切り出し、半導体のパッケージにする工程。

ウエハーをブレードで一つ一つのチップに切り出す「ダイシング」を行う。この工程で使うダイシング装置では、ディスコがトップシェアを持つ。

ダイシングの様子(ディスコ提供)

その後、切り出したチップを金属の枠に固定し、配線ができるようにする「ワイヤーボンディング」とチップを衝撃から守るため、樹脂でパッケージングする「モールディング」の工程を経る。それらを性能検査して、ようやく製品として完成する。検査装置ではアドバンテストが日本の代表的なメーカーだ。