意識について 2018 (上) | ihsotasathoのブログって言うほどでもないのですが

ihsotasathoのブログって言うほどでもないのですが

twitterで書いたことをまとめたりしていましたが、最近は直接ココに書き込んだりしています

1月も疾うに過ぎ、2月も終盤ですが、2018年の年初ということで整理しました。

なるべく確かめながらまとめましたが、他者記事については自分の理解が追いついていない部分があります。

 

文中のリンクは2018年1月頃に探って貼ったものです。

今後参照できなくなるかもしれません。

 

1. 目的 

 

目的は、意識のハードプロブレムを説明する物理法則を明らかにすることです。

 

意識のハードプロブレムについて:wikiの記事

 

意識を説明できる物理法則が解っても、特段得るものはないかもしれません。

意識する事自体、人にとって当たり前にできているこですから、どう実現されていようが気にする必要がないものです。

意識について考えるなんて究極の娯楽ではないかと思うほどです。

 

一方で意識の内容は個人的事情でしかないため、直接取り扱えない厄介な問題でもあります。

脳を見ても相手が何を意識しているのかわからないのです。

脳の活動と本人の報告との相関を調べて推測できるようになりますが、この下調べ無しに意識の内容を言い当てるなど、できないのです。

 

この後「意識をこう考えたらいいのではないか」とひとつの仮説を立てるのですが、そこでも結局、ある人の意識のあり方を探る点において、下調べ無しに内容を言い当てる事ができない点では変わらないため、大したものではないのでしょう。

マシになる点を挙げるならば、「過去に意識できたことがあるなら、それ以降で、どのような意識をどう生じさせるのか決められるようになる」かもしれません。

 

さて、このように厄介で危うい問題にもかかわらず、意識に魅せられて調べている人たちが私以外にも世界には何人もおります。

 

wikiにはその極一部の人たちが紹介されています:wikiの記事

 

意識にも大まかな分類があります。

wikiのType of Consciousnessにまとめられています:wikiの記事

 

自分の関心はこの中でも、hard problem(David Chalmersより)と呼ばれているものになります。

この問題について自然科学の立場で物理法則を明らかにしたいということです。

物理法則を明らかにして、再現や予測を行えるようにしたいということです。

(あるいは、物理法則で説明できないと証明することです)

 

神経細胞に焦点を当てて、意識との相関を見つける場合は、NCCを見つける、という言われ方がされます:wikiの記事

今回の話は神経細胞を構成する分子に着目して考えていくことになります。

 

意識を生じさせているであろう現象については様々候補があり、どの現象が意識そのものを示すのかはわかっていません。

どれだけ探っても、観測できる物理現象は「前提条件」のようであり「意識の内容のそれと一対一に対応づけるもの」ではないように見えます。

 

それもそのはずで、何か意識している状態の観測とはつまり、神経細胞の活動やそれらをとりまく分子の運動までしか我々は確認できていません。意識している内容は様々あり得ますが、神経細胞の活動は一様に見えます。

 

意識研究の日本語でまとめられたページとして脳科学辞典のページなどは参考になります。

意識(土谷 尚嗣):脳科学辞典wikiのページ

 

2. 方法 

 

最低限の仮説を導入してモデルを組み立てて検証します。

 

例えば「意識は天がくれた大切なもの」という説明から納得する場合もあるでしょう。

例えば「意識は量子力学や量子電磁気学で説明できる」から納得する場合もあるでしょう。

 

ですがこの説明では、物理法則を明らかにして再現や予測をできるようにしたい私の求めている説明としては不十分です。

物理法則を明らかにするため、記号と意識の内容を、一対一に対応づけるようなルールを見つけられていないのです。

(あるいは、記号処理として書き下せないと証明できていないのです)

 

それに近づくため、最低限の仮説を設け、その仮説を使って様々な事例を説明し、仮説が正しかったと裏付けることを通じて、法則を確定させる必要があると考えます。

そしてそのために、現状わかっている事実を集めてそれらの最大公約数を求めるのだろうと考えています。

 

ところで、意識そのものの正体を正確に知らずとも「意識の再現」は「何かを真似することを通じて達成できる」可能性があります。

例えば、ニューラルネットワークのあるモデルを用いて、思考するようなモデルを組み立てられた時、意識がでてくる可能性があります。

そしてそれを確認するため、組み立てたそれを実際の人の脳と繋げ、繋げた人に新しい意識が確認できたか報告してもらうことで、その再現性を実証できそうです。

実際にそう考えている方はいらっしゃって、例えば、渡辺正峰さんが書籍「脳の意識 機械の意識」 の中でこのアイデアを出しています。

 

脳の意識 機械の意識(渡辺正峰):Amazonの書籍情報

 

こうして人工物に意識を生じさせても、hard problemを説明したことにはならないと私は考えます。

例えばこれは「電熱線の光の正体として電子の流れがその背景にあるにもかかわらずそれに触れず、電池と電球を動線で繋げれば電球に明かりが灯ると説明したようなもの」だからです。

私の目的「物理法則を明らかにして再現や予測をできるようにした」または「再現や予測ができる物理法則を作れないと証明した」という目的とは異なります。

 

補足:活用できる最低限のパスを見つけることは重要です。活用方法が把握できれば一挙にビジネスへの道が開けます。

 

3. 具体化

 

ここでは仮説と検証について書きます。

 

仮説は以下の構成からなります。

「」に書いた用語は後で説明します。

 

・「物性素子」の振る舞いと関連する「情報素子」が存在します。

・異なる「物性素子」同士は影響し合う距離に達すると「演算」が行われます。

・「演算」では「物性素子」が何らかの物理構造を変化させる(エネルギーのやりとりがある)かもしれないし、させないかもしれないが、「情報素子」は何らかの変化を起こします。

・「情報素子」の集合「情報素子群」には、質に関する「質の情報」と位置に関する「相対位置情報」が保管されています。

・同じ「遡上演算の限界」を持つ「情報素子群」と、異なる「遡上演算の限界」をもつ「情報素子群」が「演算」されると、「情報素子群」の情報に対して絶対的な位置が確定し、それが意識として仮想空間を構成します。これを「遡上演算」と呼び、この時すべての位置情報に矛盾がないよう「質の情報」が構成された仮想空間に配置されます。

 

絶対的な位置情報は情報素子には存在せず、演算時における位置や移動の差分を意味する相対的な変異が記録されています。

以降はこれを「相対位置情報」と呼ぶことにします。

演算時の物性素子としての位置関係や動きが、その情報の内容を決めてくれます。

 

補足:ネットワークをノードとエッジを使って説明する場合の、ノードとエッジも物性素子であり、そこに情報素子は表現されていません。

 

補足:情報素子は過去にコンテンツと呼んでいたこともありました。

 

3.1 演算と物性素子(群)について

 

演算Fは、物性素子d[1],d[2]を別の状態の物性素子d’[1],d’[2]に変換するとします。

 

F[1]((d[1], d[2])) -> (d’[1], d’[2])

 

補足:[ ]は区別するためのインデックスです。演算Fには色々な演算のされ方があるため、F[1]のように1というインデックスをつけました。物性素子の[1]や[2]もインデックスです。インデックスには自然数を使います。

 

補足:物性素子は物質を構成する素子で、電子、分子などさまざまなものがあり得ます。

 

補足:Fは演算子で表現可能かもしれませんが、具体的な形が現状は不明であるため、今は単に「演算」と呼びます。

 

また、演算F[1]はこの演算が機能するよう集まった物性素子群の性質から決まります。これを決めている演算を仮にN[1]とします。

N[1]を決める物性素子群d[x[1]], d[x[2]], d[x[3]], …, d[x[M]]があり、そのうちのひとつが、d[x[n]] = d[1]となっています(1≦n≦M | n, M, x[n]∈インデックス)。

 

N[1](d[x[1]], d[x[2]], d[x[3]], …, d[1], …, d[x[M]]) -> F[1]((d[1], X))

(1≦n≦M | n, M, x[n]∈インデックス)(X∈物性素子の集合)

 

補足:ある複数の物性素子が、同時にある複数の物性素子と影響し合う、というのを表現していこうとしています。そしてその物性素子が持つ状態を情報と捉えます。そしてその情報の内容は、影響し合う物性素子の特性によって所詮は有限個にしかならないだろうと考えます。

 

3.2 情報素子群について

 

演算F[1]による変換では、d’[1]の状態にd’[2]の状態と対になる情報を「含んだ」情報素子群I’[1]が残されます。

反対にd’[2]にはd’[1]と対になる情報を「含んだ」情報素子群I’[2]が残ります。

 

d’[1] : I’[1]

d’[2] : I’[2]

 

と書くことにします。

 

本来であればd[1]やd[2]にも情報素子群があったと考えますので以下のように表すべきでしょう。

 

F1((d[1] : I[1], d[2] : I[2])) -> (d’[1] : I’[1], d’[2] : I’[2])

 

情報素子群I’[1]と情報素子群I’[2]はそれぞれ、N[1]の物性素子群から影響を受けた情報素子の集合で、重ね合わせ可能な「なんらかの状態」の集まりです。

 

補足:この重ね合わせ可能とは、正規直交基底を使って表現できるということに同じではないかと考えています。

 

この「なんらかの状態」の集まりを I’[2] = {I’[2[1]], I’[2[2]], …, I’[2[n[1]]]}のように表すことにします。

 

情報素子は、質に関する内容と、過去に演算で関連した物性素子群との相対的な位置関係の内容が、組みとなって保管されています。

その表現方法については後述します。

 

d’[2]が持っている情報素子群I’[2]は、N[1](演算F[1]でd[1]とd[2]がd’[1]やd’[2]に変換される)によって決められたものです。

 

3.3 情報素子群の編集について

 

d[2]は演算F[1]で変更された後、d’[2]となりました。これと同様に、さらに別の物性素子と演算F[x](xはインデックス)が起こり、d’[2]もさらに別の演算で変換され…というふうに演算が繰り返されるとします。

 

この時F[x[y]]((d[x]z]], d’[2]))([x[y]], [x[z]]∈インデックス)のように表せるのですが、演算F[1]で起こったようにI’[2]の情報素子群も併せて、編集されることになります。

 

この編集では以下があり得ます。

 

(1) I’[2]の情報素子群の一部(全て)が消失する

(2) I’[2]に新しい情報素子(情報素子群)が加わる

(3) (1)と(2)が同時に起こる

(4) I’[2]の情報素子群の内容は何も変わらない

 

補足:d’[2]の情報素子群の内容I2’は、d[2]に所有されていた時にd[1]と反応し、d[1]を取り巻く物性素子群d[[x]1], d[x[2]], d[x[3]], …, d[1], …, d[x[M]]の影響を演算F[1]を介して受けて決まったものでした。演算F[x[y]]の場合も、同様な作用によって情報素子群が編集されると考えます。

 

3.4 物質素子の編集と情報素子群の編集の関係

 

今までは物質素子の構成が変わらない場合を想定しましたが、化学変化などが起こると物性素子の結合構造が変わります。

 

この場合F1((d[1] : I[1], d[2] : I[2])) -> (d’[1] : I’[1], d’[2] : I’[2])では表現が不足していますので拡張します。

 

いままでd[1]やd[2]を単独の物性素子としてきましたが、これらを複数の物性素子=「物性素子群」からできていると考えます。

 

そして物性素子群と見做すため、

 

d[x[y[x]]] = {d[x[1]], d[x[2]], d[x[3]], …, d[x[y[x]]] | y[x], x ∈ インデックス}

 

などのように表すことにします。

すると、

 

F[s](d[x[y[x]]])  ->  (d’[x[y[x]]])

 

と表せます。

 

補足:左右でエネルギーは保存されています。

 

d[x[y[x]]]の情報素子群はI[x[y[x]][z]]と表せます(z ∈ インデックス)。

 

F[s](d[x[y[x]]] : I[x[y[x]][z]])  ->  (d’[x[y[x]]] : I’[x[y[x]][z]])

 

補足:分子であるということは、その結合されている物性素子群のそれぞの情報素子群みたときに、それらの内容がある視点で「同様」になっている事ではないかと考えています。

 

3.5 物性素子と情報素子の仮定からの推察

 

物性素子(群)と情報素子(群)という言葉を用いて、ある物体からそれを脳内に届けるまでの過程を対応づけます。

色、音、におい、味、感覚として説明する場合、たくさんの区別する記号を用いて説明すべきですが、ここでは物性素子や情報素子という言葉で丸めて整理していきます。

 

意識される対象:

 

意識される対象(意識される内容)は、受容器に到達する以前のどこかで「なんらかの物理的事象」が起こって生成されます。

光であれば光が物に当たって反射することであり、音であれば空気の振動を生み出すなんらかの動きです。

こうした事象も演算です。

演算後の物性素子群は、視覚向けであれば光子になっています。

聴覚、嗅覚、味覚、触覚、体内感覚であればなんらかの分子です。

演算後の情報素子群は、光であれば反射(演算)された分子を構成する物性素子群に関する情報素子群が含まれます。

音であれば分子を構成する物性素子群同士の衝突(演算)に伴う情報素子群が含まれます。

嗅覚、味覚、触覚、体内感覚では、それぞれの受容器が駆動する際に起こった化学反応(演算)に伴う物性素子群に関わる情報素子群が含まれます。

補足:光が真空でない場所を通過してくる際、その気体が構成する分子の影響を受けます(物性素子群同士の演算があり、情報素子群が書き換えられます)

 

受容器:

 

神経細胞に情報を渡すための、体に備わった組織です。分子でできています。受容器の受容細胞で信号が受容されると、大量の分子が影響を受けて動きます。結果として神経細胞を駆動させます。

受容器での演算の後、物性素子は神経細胞に信号を渡すために分子が駆動します。

受容器での演算の後、意識される内容は残っていると考えられます。しかしながら受容器で演算に加担した物性素子群の情報素子群も引き継いでいると考えます。

 

神経細胞:

 

物性素子は信号が神経細胞を通過する際、様々な分子やイオン(物性素子群)と出会ってたくさん演算が行われます。

情報素子は神経細胞を通過する際に関係した物性素子群の影響を受けて情報素子群もそれ相応に編集されると考えられますが、意識されるために必要な情報素子群は残っていると考えます。

 

意識される瞬間の物性素子は、意識される内容を直接構成していた物性素子とは異なっています(リンゴを意識する場合、リンゴと、リンゴを意識するであろう神経細胞は、違う物性素子です)。

物体としてのリンゴから、リンゴを意識する神経細胞に至るまでに運ばれた情報素子群に、リンゴで反射した瞬間に生成された(演算の結果)情報素子群のなんらかの影響が残っていたと考える必要があります。

 

もしこれを認めるなら、

すべての演算で取り扱われる情報素子群の「相対的な位置」に関する情報も、特別と考えねばなりません。意識される際、それらは確かに、矛盾がないように「組み立てられ」ます。

味を感じている場所や匂いを感じている場所も、舌辺りだったり、顔の前あたりという感覚になっています。

口を閉じて頭の中で語る時、その「声のようなもの」は頭のなかで響いているように感じます。

 

これは意識される空間全体の中で矛盾がないよう組み立てられた結果、そこに位置付くように感じられたと考えます。

この再現性については、次に紹介する遡上演算の部分で仮説を立てています。

 

3.6 順方向な情報素子の演算と逆方向な情報素子の演算(遡上演算)

 

遡上演算された結果が、意識の内容になると考えます。

 

次は、演算とその逆演算(遡上演算)について見てみます。

 

3.6.1 順方向の演算 - 物性素子視点の特徴

 

順方向の演算がどのようなエネルギーの流れで起こっているのか。

五感それぞれのエネルギーの流れに着目し、その流れに対して遡上演算と何が違うのか、から探ります。

 

改めて、五感や神経細胞で起こっている物性素子上の変化について見ていきます。

 

光:

 

物質で反射するとき、その物質特有の周波数に変えられます。

光子として飛び出します。大量に飛び出し、その一部が視覚の受容器に届きます。

光:wikiの記事

光子:wikiの記事

 

視覚:

 

視細胞では、視物質(特定の周波数帯の光子が届くと構造変化する)が光刺激を受けて構造変化し、視細胞内の特定のタンパク質を分解します。

1個の視細胞は数10から数100分子程度に影響を与え、チャンネルを開けている別の分子を分解し、チャンネルが閉じます。

チャンネルから流入していたカチオン(陽イオン)の流入が抑えられ、一時的に過分極が起こります。

陽イオンの電流が生じます。

ミリボルトのオーダで電圧が変化し、ピコアンペアのオーダの電流が生じます。

視細胞の光受容メカニズム(今元 泰):J-STAGE保管のPDF

網膜におけるシナプス伝達(立花 政夫):早稲田大学先進理工学部応用物理学科鵜飼研究室のサイト内PDF

 

音:

 

音源から分子が急速に動いてその先の分子にぶつかり、それがさらに広がっていきます。

音:wikiの記事

音波:wikiの記事

 

聴覚:

 

細胞の毛が振動すると、それと連動して細胞を分極させているチャンネルの開閉が起こり、細胞の電位が変わり、電流が発生します。ミリボルトのオーダで電圧が変化し、ピコアンペアのオーダの電流が生じるようです。

前庭抹消器官の形態と機能(大森治紀):J-STAGE保管のPDF

 

嗅覚:

 

匂いの種類は受容する細胞ごとに異なっています。嗅覚細胞の受容体で、型の合った匂い物質が到達すると、数種類のタンパク質を活性化させて、最終的には細胞のチャンネルを開いて、陽イオンを細胞内に流入させます。ピコアンペアのオーダの電流が生じるようです。

匂い物質の形状の違いが、匂いの違いに対応している可能性がありますが、まだ詳しいことはわかっていません。

におい受容のしくみ-嗅上皮から嗅球まで(大瀧 丈二):J-STAGE保管のPDF

嗅細胞における情報変換機構とモジュレーション(倉橋 隆):J-STAGE保管のPDF

量子力学で生命の謎を解く(ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン、(訳)水谷 淳):Amazonの書籍情報

 

味覚:

 

味細胞の受容体に味物質が到達すると、味細胞内のカリウムイオン貯蔵庫からカリウムイオンを放出させるメッセンジャーが生成されます。カリウムイオンが放出されると味細胞のイオンチャンネルも開き、活動電位が発生します。ミリボルトのオーダで電圧が変化し、ピコからナノアンペアのオーダの電流が生じます。

味蕾細胞の電位依存性チャネル(吉井 清哲):J-STAGE保管のPDF

ほ乳類味覚器(吉井 清哲、大坪 義孝、熊澤 隆):大阪府立大学のサイト内PDF

 

触覚:

 

触覚については、内臓感覚を含め、さまざまな様式がありますが、表面積あたりの分解能や伝達速度については調査されているものの、活動電位の話題は見つけられませんでした。しかしながら、神経細胞に信号を送る際、細胞のチャネルが開いてイオンの流れが生じているようではあります。

ヒト触覚受容器の構造と特性(岩村 吉晃):J-STAGE保管のPDF

ヒトの触覚のメカニズム(下条 誠):電気通信大学下条・明研究室サイト内PDF

 

神経細胞:

 

信号は、神経細胞間であればシナプスを、神経細胞自体であれば軸索を伝わります。シナプスでは、シナプス前細胞に信号が到達すると、伝達物質を伝えるチャンネルを開きます。その際もいくつかの分子が関係します。

後シナプスは伝達物質を受け取ってイオンチャンネルを開き、陽イオンを取り込んで電圧を変えます。

軸索の伝達では、ミリボルトのオーダーで活動電位が発生します。数百ピコアンペア程度の電流を流せるようです。

活動電位:wikiの記事

シナプス:wikiの記事

 

これらの五感の受容器に見られる傾向は、受容体へのきっかけは小さいのですが、受容体で様々な分子が作用し、鼠算的に拡大させています。

また、神経細胞はそうした影響を、同様にたくさんの分子やイオンの活動させることにより、神経回路網を伝搬させていきます。

意識されるべき内容を含んだ情報素子群はそれらに「転写」されていくと考えなければなりません。

意識されるまでにものすごいたくさんの物性素子を経ているにもかかわらずです。

 

こう考えてくると、脳内ではたくさんの物性素子群が影響しあい何度と演算が繰り返され、それに伴って情報素子群が移動して行くと考えられます。

受容器で受容した情報素子群の内容が、こうした影響を受けて消えてしまわないか心配になりますが、それでも意識される事実を認めるなら、それが残っていると考える必要があります。

 

補足:ひょっとしたら、電磁的な影響(荷電粒子を動かす)を広げることでこの情報素子群を納められる空間を制御できるのかもしれません。例えば、受容器で受容した時と比べ、神経細胞に渡された後の方が多くの荷電粒子(イオン)を動かしているよう見えます。先の説明で電流が生じている点を明に記載していたのは、こうして情報素子群を溜め込むポテンシャルと関係があるかもしれないと考えたことから、併せて示していました。

 

補足:以前電磁気的な作用が意識に関係しているのではないかと推測したのですが、それを一般化する内容になったと考えています。今は電磁気ではなく、物性素子という表現をしています。物性素子が移動すると電磁気的な作用が生じ、電磁気的な作用が働くと情報素子群に影響を及ぼすという流れです。物性素子はなんらかの形で極性を持った粒子を極狭い範囲で運動させており、電磁気的な作用を継続させています。

分子:wikiの記事

 

3.6.2 遡上演算の定義

 

遡上演算を定義します。

 

遡上演算は、「ある物性素子群の演算の際、同じ情報素子群を一部に含む場合、互いの矛盾を解消するよう、できる限り過去の情報素子群へさかのぼって三次元空間として矛盾なく情報素子群を並び替えて結合する操作」です。

 

例えばある時点でd3が以下のようになっているとします。

 

d[3] : I[3]

I[3] = {I[x[1]], I[x[2]], …, I[x[s]], …,  I[x[s+t]], …, I[x[n]]  | x, n, s, t ∈ インデックス, (s + t) ≦ n} 

 

次の演算Fxで、相互作用するd[4]にも{I[x[s]], …,  I[x[s+t]]}が含まれていたとします。

d[4]が、

 

d[4] : I[4]

I[4] = {I[y[1]], I[y[2]], …, I[x[s]], …,  I[x[s+t]], …, I[y[m]]  | x, y, s, t, m ∈ インデックス, (s + t) ≦ n} 

 

だっとします。

 

Fx(d[4], d[3]) -> (d’[4], d’[3])では、共通するI[x[s]], …,  I[x[s+t]]以外、過去の相対位置情報を頼りに整理整頓が起こります。

 

神経細胞は神経回路網を構成する上で、分岐する経路をいくつも提供していると考えられます。

そのため次の図のような例があり得ます。

 

経路図1:分岐と統合を含む経路の概略図

 

この分岐と統合の過程で、それぞれ異なる情報素子群が供給される経路が次の図のように追加されたとします。

 

経路図2:同じ起点を含まない経路が統合される場合

 

こうなった後の統合の部分を担う演算では、意識を生じさせるような遡上演算が発動します。

図2に具体的に情報素子群の例を加えてみます。

最後のノードに達した時、ダブルクォート内の情報素子群が遡上演算の対象になります。

 

補足:一度分岐して、統合するまでの間に、様々な情報素子群が供給される経路が必要と考えています。

 

経路図3:遡上演算される情報素子群

 

そしてその遡上演算では、過去に加えられてきた情報素子群を遡るように位置の調整が進み「相対的な位置関係を保存した状態で質が配置」されます。

遡上演算は質の位置を特定するために行われます。そのため、意識の機能はこの質の位置を特定することと言い換えることもできます。

 

補足:意識の内容は仮想空間に作られたものですが、現実に限りなく近い仮想もあれば、現実から程遠い仮想もあります。

 

補足:遡上演算で遡ることのできる位置の限界は、演算時に加えられた情報素子群を演算された順番とは逆の順番に辿った時に使い果たされるまでです。また、周回する経路が生じた時に、ちょうどすべての情報素子群が上書きされてしまうような容量や距離の関係というものがあるのかもしれません。この場合、その上書きされる前に残った情報素子群が、遡上演算で遡れる上限ということになります。

 

補足:情報素子群を保存できるに十分な容量を確保できなかった場合、古いものから削除されると考えます。減衰係数のようなものがあり、古いものから影響が小さくなるような考え方かもしれませんが、いずれにせよ古い方ほど影響が小さくなり、やがて消える、ような仕組みがあります。この場合、削除されていない過去の情報素子までが、つまり、演算を逆に辿って辿れるまでが遡上演算が可能な範囲ということになります。

 

ここまでで仮説の基本部分は説明できました。

 

この仮説に基づくと以下のようなことを決めて意識の内容を制御できるようになると考えられます。

 

- どのような情報素子をどのような受容器を使って神経細胞に流しこむか

- どのような情報素子をどのような経路で演算させるか

- どのようなタイミングで遡上演算が起こるようにするか

 

これらを神経細胞のネットワークをうまく整えることによって操作できることを示したと考えています。

 

以下では脳の機能性に着目しながらこの仮説を補強しますが、どのような神経細胞のネットワークであればそれが実現できそうかと言う視点から説明を試みています。

 

経路図4:情報素子群の容量と遡上演算の限界の関係

 

これは「例えばこうであるならば」の図です。

図の青や黄緑ように周回経路を当てはめることができます。

実際の脳に当てるなら、赤いノードが感覚野付近、青いエッジは脳全体の領野を跨ぐような経路で、黄緑のエッジは前頭葉に閉じたような経路です。紫、水、橙の各ノードは状況に応じて異なるノードです。

 

もし容量に限界があるとノードの+{?}で加えられる情報素子を全て収められなくなります。そうすると過去のものから消えていきます。

もし減衰係数のようなものがあると、ノードを経るごとに古いものから消えていき得ます。

 

補足:閉口したまま頭の中で語ったるような場合、頭の中から声を発しているように感じます。また、実際には物がないのに目の前にあるようにイメージすることもあります。そして、夢のように視覚から何も入力さていないはずにもかかわらず、何らかの情景を感じることもあります。このような情報素子群は脳内で生成され、遡上演算でも脳内の該当する場所までしか遡れなかったと考えます。

 

経路図2に見られる経路について、例えばオレキシンの経路というものが関係するかもしれません。

覚醒時の脳では、視床下部外惻野からオレキシンという神経ペプチドが大脳皮質全体に送り込む仕組みが動いているようで、この神経ペプチドのような仕掛けが、同一情報素子群を提供している可能性があります。

オレキシンによる覚醒と睡眠の制御(桜井 武):科学技術振興機構バイオサイエンスデータベースセンターサイト内PDF

 

脳内全体的に影響を及ぼすような神経伝達物質の経路の存在(分離して再開するための物性素子の存在)と、それらに巻き込まれて行くような外部刺激からの信号(外からの情報素子群を運んでくる物性素子群の存在)がどこかで集約されることが、意識を発生させる必要条件ということになります。

 

3.6.3 情報素子群の情報不十分な状態

 

遡上演算で情報素子群の相対位置情報を頼りに意識を構成する際、情報素子群が不足しており「三次元空間の実際の事象」通り再現できない場合、最も近隣の情報素子群の内容が統合された内容で塗りつぶされると考えます。

これを「遡上演算による情報補完」と呼ぶことにします。

 

3.6.4 記憶

 

内部起点の情報素子群となるように、神経回路が形成されることが、記憶(長期記憶)として定着させることに対応していると考えます。

 

補足:「周回する経路が生じた時に、ちょうどすべての情報素子群が上書きされてしまうような距離というものがあるのかもしれません。」と書いたのですが、もし周回する経路に流入する情報素子群が、回路の構成上「同じような質の内容(絶対位置はない、相対位置ではある)」になる場合、それら情報素子群が定着する可能性があると考えています。

 

補足:質が神経細胞(物性素子)に定着するために十分な回数通過する必要があると考えます。濃度で言うところの質が濃くなると言うことです。一方で、薄くなる要因も物性素子の性質上あると考えます(例えば神経細胞自身の代謝による物性素子の流出です)。そのため、記憶として機能するに必要十分な繰り返し回数や頻度と言うものがあると考えます。

 

経路図5:記憶として定着される場合

 

補足:記憶されたものを思い出すとき、形があるものを思い出している場合があります。この思い出しているものが形として意識されている場合、その形の位置は情報素子群の遡上演算で到達できる神経細胞であり(内部起点の情報素子だった)、思い出しているものの形は、遡上演算で情報補完されたものと考えています。この場合、位置が常にぼんやりしていることになります。相対位置情報を使ってうまく組み合わせた時、具体的な像を思い出せることになると考えます。

 

補足:実際に今見ているものははっきりと位置が特定され、一方で、記憶を思い出す際に見る像がぼんやりしてそれが脳の中らへんの写っているように感じるのは、どこ起点の情報素子群が絶対量として多いのかで、決められていると考えます。また、起点の情報素子群を遡上演算した結果重なっていたとしても有意だったものだけが優先されるわけではなく、重なって再現されると考えます。

 

3.6.5 長期記憶

 

補足:様々な事柄を思い出せるようにするため、ネットワークの組み立て方に工夫が必要になります。ポイントは以下の通りです。

まず、記憶が固定されるために以下が必要です。

1)同じような情報が流入するようなノード(物性素子の塊)がある。

2)情報素子群が全て書き換わってしまうような周回経路がある。

3)想起している状態を継続させるために、ノード自体に一定の反応しない時間を設けて、複数のノードをまたいで周回する。

バリエーションを効率的に用意できるように以下が必要と考えます。

4)周回経路は重なっているが、同じような情報が流入するノードは異なっている。

5)4)を実現するために、周回経路が駆動しはじめると、他の周回経路が駆動しなくなる。

6)5)を実現するために、想起の起点となるようなノードは周りのノードを抑制する性質がある。

以下のような応用も考えられます。

7)周回経路をあらゆる記憶と共通化しているような部分を情報素子群の起点とするように周回経路を作ると、抽象的な内容を想起できるようになる。

8)想起されたものから他の関連する事柄が適切に想起されるように、他の関連する周回経路のノードにもきっかけは送り続けている。

9)思考内容を継続させることと、様々な種類の思考を可能にすることを、限られた脳のサイズで両立させるため、入力から独立した周回経路をたくさん形成し、それを定常的に活性化させる仕組みがある。

 

3.6.6 短期記憶

 

短期記憶は必要に応じて内容が書き換わります。これは長期記憶のように周回経路を形成できていないものの、定期的に発信している部位の周期性を借りて一時的に周回経路を形成している場合と考えます。

この時、使用する長期記憶が収められた脳としての場所に到達できるよう、到達する順番を含めて再現できるように、この一時的な周回経路を形成していると考えます。

 

経路図6:一時的な周回経路の形成

 

長期記憶と短期記憶についての参考は以下です。

Short-Term Memory and Long-Term Memory are Still Different (Dennis Norris) : PDF on APA PsycNET