組織風土やカルチャーといった要素が個人のモラルにどのような影響を受けるのかについて考察してみたい。
組織の風土やカルチャーが、その組織のメンバーのモラルに与える影響としては以下の要素が考えられる。
まずはこれらの要素の特徴を明らかにし、その後、これらの要素をどのように活用すれば、組織や共同体のモラル向上につなげられるのかという点を考えてみる。
①模範の存在
かつて「武士は国民の師表」と言われたように、組織や共同体のモラルを代表する個人や階層の存在は、その組織・共同体の風土やカルチャーに大きな影響を与える。
例えば、武士が体現する武士道のようなモラルが、人々の一般的な意識における、一つの目指すべき理想として共有される。
尚、模範として影響力を発揮するためには、その模範たるべき人々が、世間一般から目指すべき存在として、その価値を認められている必要がある。
②見られている意識
世間様という言葉があるが、「見られている」
という意識は、人々の行動にある種の制約を与える。
わかりやすい例で言えば、ある学校の制服を着ることで、その学校の生徒として見られているという意識が働き、その学校の生徒に相応しいと考えられている振る舞いを取るようになる。
③代表意識
「家名を汚す」「看板に泥を塗る」という言葉があるが、ある組織を代表している意識を持つことも、個人の行動を制約する作用を持つ。
この代表意識は、その個人によって代表される集団の評判や名声が高いほど、その個人に対する影響力もより強いものとなる。
不良生徒ばかりと悪評高い学校の生徒であることと、伝統ある名門校とでは、その組織の一員である意識が個人に与える感化の質に天地の差があることは明らかである。
代表意識とは、どのような組織・集団においても生じるものではなく、その組織を代表することにある種の「重み」を感じられることが必要なのだろう。
▪️組織・集団のモラルを高めるには?
以上、個人のモラルに影響を与える要素として、
・模範の存在
・見られている意識
・代表意識
の3点を検討したが、
これらの要素が個人のモラルに影響する要因については、端的に「敬」と「恥」という概念に整理することができるだろう。
人間学の泰斗である安岡正篤氏の著作の中に、
「より高きもの、より貴きものを求めるという心が「敬」であります。そうすると相対性原理によって、みずから省みて必ず恥ずるという心が湧いてくる。」
という一節があるが、
組織のリーダー層、あるいは組織そのものが、その組織に属する個人にとって、敬意を抱く価値のある存在であり、
そしてその個人が、リーダー層や組織の示す優等性と自分自身とを比較した際に、両者間のギャップの大きさを「恥」と感じ、そのギャップを埋めようと発心することが、個人がモラルを高めようとする動機を生むのである。
それゆえ、組織・集団が、そこに属する個人のモラルを高く保つためには、その組織・集団のリーダー層、あるいはその組織・集団そのものが、そこに属する個人にとって「敬」の対象となることが必要となる。
それでは、以上の考察を、日々の仕事の場面でどのように活かし、どのように組織のモラルを高めて行くことができるのか。
まず第一に重要なことは、自身がリーダーや管理者の立場にあるのならば、自身の立ち居振舞いがメンバーにとって手本となるような意識を持つ必要があるだろう。
また、自身の属する組織が、高い実績を挙げ、周囲から一目置かれるような組織であるようにマネジメントしていくことも必要だろう。
組織・集団のリーダー層がメンバーの目指すべき存在として敬され、メンバーが組織・集団の一員であることへの誇りを感じてその一員として相応しい存在となるよう自己を律する。
このような組織風土を作ることができれば、メンバーのエンゲージメントは自然と高まり、規律ある強い組織を実現できるのではないだろうか。