死ぬまでに読みたい!『寺田の数学鉄則』 | いこいのみぎわ

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牧師であり家庭教師である摩周遍里の、ときにまじめに聖書的、ときに脱線して、飼い犬のユテコくんも笑い出す、つれづれブログです。

 「ええっ、大学受験時代の参考書を、まだ大事にとってあるの?」……そうなんです。竹内均先生の『よくわかる物理Ⅰ』と、寺田文行先生の『数学Ⅰ・ⅡB・Ⅲの鉄則』(いわゆる『寺田の数学鉄則シリーズ』)だけは、しっかりとってあるのです。

 

 今回ご紹介したいのは、その『寺田の数学鉄則シリーズ』です。この本、そして著者の寺田文行先生は、数学嫌いだった私に数学の眼を開いてくださいました。

 

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 私は高校2年の前半まで、数学が大の苦手で嫌いでした。定期試験も、赤点スレスレで切り抜けてきたのです。けれども、私は第一志望を国立大学にしていたので(結局落ちましたが……)、当時の共通一次試験(現在のセンター試験)を受験しなければなりません。当時の共通一次は5教科7科目を受験しなければならず、数学を避けて通ることはできませんでした。

 

 ところが、そんな私が、なぜか微分・積分(ただし現在の数学Ⅱのレベル)を勉強しているとき、不思議と「数学って面白いな……」と感じはじめてきたのです。

 

 そして時を同じくして、当時旺文社が文化放送をキーステーションに全国で放送していた「大学受験ラジオ講座」の存在を知って聞き始めました。田島一郎先生、勝浦捨造先生、佐藤恒雄先生、そしてゲストで1回だけ森毅先生、藤原正彦先生など、数学だけでも今から思えばそうそうたる一流講師の講義が放送されていました。特にその中で、私が欠かさずに聞いていたのが、寺田文行先生の数学鉄則ゼミだったのです。

 

 

 寺田先生の手にかかると、東大・京大クラスの難問が、不思議となんでもなくなってしまうほど、解法の流れがよくわかるのです。問題へのアタックの仕方さえ正しければ、必ず答えに至る糸口が見つかる……数学の学習で大事なこと(同時に数学の醍醐味でもあります)は、まさに問題へのアタックの仕方を論理的・系統的に身につけて考えていくことにあることを、私は鉄則ゼミを通して知ったのでした。「入試問題は、解けるようにできている」「数学は、書くこと・覚えること・まねること」……ラジオで寺田先生が口癖のようにおっしゃっていたことを、今、家庭教師になって自分が生徒さんに言っています。

 

 

 そして、話は受験時代だけで終わりません。数学の面白さに目が開かれた私は、高校で履修しなかった数学Ⅲ(現在の数学Ⅲに微分方程式と統計を加え、二次曲線と複素数平面を削った内容)を、なんと当時代々木ゼミナールで寺田先生が直接指導しておられた「数Ⅲ鉄則ゼミ」を受講して学びました。あこがれの寺田先生に直接お目にかかって、サインもいただいたのです!


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 そして社会人になってから、地球科学と微分・積分学をさらに深く学んでみたいという思いで放送大学に学士入学し、齋藤正彦先生の「微積分入門」、熊原啓作先生の「解析学」を通して、複素関数論と微分方程式論の初歩まで学びました。

 

 振り返って、「人生は出会いで決まる」ということばは真実だなぁ……と思います。ここまで私が数学に入れ込むようになったのは、明らかに『寺田の数学鉄則』のおかげです。上の写真のサインを書いてくださったあと「頑張ってね!」と励ましてくださったときの、寺田先生のやさしさに満ちた笑顔を、私は生涯忘れることはないでしょう。寺田先生の影響を受けた私自身が、私と接する生徒さんにいい出会いとなるよう、寺田先生から受けたものを流していきたいと願っています。

 

 

<付記>

寺田文行先生は、2016年3月3日に亡くなられたと伺いました。わずかな期間でしたが、生前の先生に接することができたことは、私の人生の宝です。天国で、寺田先生と再会するときを心から楽しみにしております。