下記の文章は某商談において既存レセコンベンダーに敗戦した際に僕が病院トップ向けにしたためたものです。
業者選定のための評価方法が、たった1回の営業プレゼンとたった1回の製品デモンストレーションの合計2時間であったことから、出来レースであったことが推察されます。
しかし、既存レセコンベンダーが提案してきている電子カルテメーカーは明らかに企業与信において深刻な問題があり、提供されるアプリケーションを継続的に使い続けることが難しくなることは明白でした。特別なご縁があった訳ではありませんから誤解を受けるような進言は不要とも考えましたが、これもまた果たすべき責務と考えて頭を捻りに捻って書きました。
最終的には販売店のビジネスにも影響する可能性があると判断されてお蔵入りとなりました。
先日、介護コンサルをしている母に読んで聞かせたところ、これを送っていないことについて酷く叱責されました(笑)
なので、これも少しもったいない気がするのでここに挙げておこうと思います。
しかし、このユーザーが契約時にリスクヘッジできたのかどうか心配ですね。
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医療法人◯◯会 ◯◯病院
理事長)◯◯ ◯◯ 様
お世話になります。
藤川@ベータソフトです。
昨日弊社代理店であるA社より、貴法人の電子カルテ選考においてB社製品が選定されたとの報告を受けました。
C県下ではまず、D病院様への電子カルテ導入という実績を作った上で、満を持しての貴法人へのご提案機会となりましたので、なんとしてでもご縁を頂戴致したく弊社製品・サービスに関する精一杯のご提案をさせて頂きましたので、この度の結果については誠に残念でなりません。
願わくば弊社が選定に至らなかった点についてご教授頂き、今後の参考とさせて頂ければ幸いでございます。
ところで。
このような発言があらぬ誤解に繋がり先生のご不興を買うことを覚悟した上で、これもまたこの業界に関わる人間としての責務であると判断し、進言させて頂くことと致しました。従いまして、ご不快に感じられましたならば即刻削除頂ければと存じます。
まず精神科向け電子カルテにおいて最も重要視されることは、《継続性》であると考量致します。つまり、ずっと使い続けることのできる製品なのか評価することが何よりも重要な選定ポイントではないかということです。なぜなら、身体科と異なり精神科の記録は疾患の特性から生涯にわたって管理することが求められます。また、全国104施設の精神科病院における導入経験から、精神科治療の継続性という面において蓄積された診療情報が如何に重要な資産であるのか肌身に感じて参りました。余談でございますが、ちょうど7年前、弊社内のクーデターによる社員の大量退職がトリガーとなった倒産の噂により、新規契約案件がぱったりと止まりました。当然、財務状況も著しく悪化し、日精協理事会での事情説明を求めらることにもなりました。弊社製品の導入を決定しておられた医療機関からも信用調査会社を通して与信調査を受けることとなり、ありのままの財務状況を公開した結果キャンセルとなりました。しかし、超社会システムである電子カルテを取り扱うメーカーには必ず問われるものであり、企業としての健全性を保ち、市場の信頼を得ることも重要な責任なのだと痛感致しました。
この度、A社を通じて弊社の与信調査結果を明示させて頂きましたのも、上記のような苦い経験を踏まえ、弊社の継続性を積極的に開示させて頂くことで、厳しくご評価頂くべきであると考えたからに他なりません。
さて、そこでBという企業ですが、ご存知の通りこれまで一切財務状況が公開されておらず、評価材料が入手できないことから《Eランク》という与信結果となっており、一般的には通常取引が極めて難しいというのが市場の客観的な評価となります。こうしたメーカーの製品の購入にあたっては、万が一の事態を想定したリスクヘッジが必要だと考えます。
電子カルテ本体の購入に係るイニシャルコストについては、システム稼働→検収→売上となれば終了です。そのため、システム稼働後になんらかの事情でアプリケーションの継続利用が難しくなった場合には保守フェーズでの訴訟ということになりますから、保守料金の支払いを巡って係争することとなります。
しかし、利用者側である病院の抱える問題は保守料金の支払い云々ではなく、蓄積された診療情報が継続利用できるのかどうかが本題となりますから、 本契約にあたっては下記内容について書面による説明を求め、契約条項として盛り込んでおくことをお勧め致します。
⒈ 今回の販売窓口であるE社がB社の事業継続性について問題なしと結論づけた根拠の提示。
⒉ 販売窓口であるE社の販売責任に関する契約条項としての明文化。
ー⑴ 万が一B社が事業継続不能となった場合、どのようにアプリケーションの継続性を担保するのか。(製品サポートはどこが継承するのか。またどのような引き継ぎ方法を想定しているか。)
ー⑵ 販売窓口であるE社がアプリケーションのサポート(QA対応、バージョンアップ、障害対応等)を引き継ぐことが不可能な場合、他社製品へのデータコンバートについて担保できるのか。(電子カルテ3原則を踏まえて、蓄積された診療データを移行可能なのか。またその際の費用は。)
以上が私どもからの進言となります。
1999年に電子カルテが承認されてから16年が経過しようとしていますが、精神科病院の電子カルテ化において最も重大なリスクとは蓄積された診療データを継続利用できなくなることです。営業都合による販売製品の変更や、製品品質の問題、精神科電子カルテ事業からの撤退や企業倒産など、さまざまな理由で現在使用している電子カルテを使い続けることが難しくなった時に他社製品へ切り替えようとしても、データ移行がネックとなり八方塞がり。。。といったような深刻な事態に直面されている精神科病院様が決して少なくないという状況を、この業界の草分けたる弊社としても見過ごす訳には参りません。
これはB社のみならず、私どもも含めた全てのメーカーが同様に抱える課題であると認識しています。でも、だからこそ自らの継続性に関わる情報はガラス張りに情報公開し、電子カルテ化に踏み出そうとされている精神科病院様の不安を少しでも解消するための具体的な取り組みをはじめることも我々精神科電子カルテメーカーに課せられた不文律だと考えます。
選ばれなかったメーカーがこのようなことを先生に申し上げることには勇気を必要と致しましたが、トップシェアメーカーを自負する我々だからこそ率直に進言させて頂くべきと考えました。
ともあれ、貴法人の電子化がスムーズに完了することを心よりお祈り申し上げます。
この度はご提案の機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。
業者選定のための評価方法が、たった1回の営業プレゼンとたった1回の製品デモンストレーションの合計2時間であったことから、出来レースであったことが推察されます。
しかし、既存レセコンベンダーが提案してきている電子カルテメーカーは明らかに企業与信において深刻な問題があり、提供されるアプリケーションを継続的に使い続けることが難しくなることは明白でした。特別なご縁があった訳ではありませんから誤解を受けるような進言は不要とも考えましたが、これもまた果たすべき責務と考えて頭を捻りに捻って書きました。
最終的には販売店のビジネスにも影響する可能性があると判断されてお蔵入りとなりました。
先日、介護コンサルをしている母に読んで聞かせたところ、これを送っていないことについて酷く叱責されました(笑)
なので、これも少しもったいない気がするのでここに挙げておこうと思います。
しかし、このユーザーが契約時にリスクヘッジできたのかどうか心配ですね。
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医療法人◯◯会 ◯◯病院
理事長)◯◯ ◯◯ 様
お世話になります。
藤川@ベータソフトです。
昨日弊社代理店であるA社より、貴法人の電子カルテ選考においてB社製品が選定されたとの報告を受けました。
C県下ではまず、D病院様への電子カルテ導入という実績を作った上で、満を持しての貴法人へのご提案機会となりましたので、なんとしてでもご縁を頂戴致したく弊社製品・サービスに関する精一杯のご提案をさせて頂きましたので、この度の結果については誠に残念でなりません。
願わくば弊社が選定に至らなかった点についてご教授頂き、今後の参考とさせて頂ければ幸いでございます。
ところで。
このような発言があらぬ誤解に繋がり先生のご不興を買うことを覚悟した上で、これもまたこの業界に関わる人間としての責務であると判断し、進言させて頂くことと致しました。従いまして、ご不快に感じられましたならば即刻削除頂ければと存じます。
まず精神科向け電子カルテにおいて最も重要視されることは、《継続性》であると考量致します。つまり、ずっと使い続けることのできる製品なのか評価することが何よりも重要な選定ポイントではないかということです。なぜなら、身体科と異なり精神科の記録は疾患の特性から生涯にわたって管理することが求められます。また、全国104施設の精神科病院における導入経験から、精神科治療の継続性という面において蓄積された診療情報が如何に重要な資産であるのか肌身に感じて参りました。余談でございますが、ちょうど7年前、弊社内のクーデターによる社員の大量退職がトリガーとなった倒産の噂により、新規契約案件がぱったりと止まりました。当然、財務状況も著しく悪化し、日精協理事会での事情説明を求めらることにもなりました。弊社製品の導入を決定しておられた医療機関からも信用調査会社を通して与信調査を受けることとなり、ありのままの財務状況を公開した結果キャンセルとなりました。しかし、超社会システムである電子カルテを取り扱うメーカーには必ず問われるものであり、企業としての健全性を保ち、市場の信頼を得ることも重要な責任なのだと痛感致しました。
この度、A社を通じて弊社の与信調査結果を明示させて頂きましたのも、上記のような苦い経験を踏まえ、弊社の継続性を積極的に開示させて頂くことで、厳しくご評価頂くべきであると考えたからに他なりません。
さて、そこでBという企業ですが、ご存知の通りこれまで一切財務状況が公開されておらず、評価材料が入手できないことから《Eランク》という与信結果となっており、一般的には通常取引が極めて難しいというのが市場の客観的な評価となります。こうしたメーカーの製品の購入にあたっては、万が一の事態を想定したリスクヘッジが必要だと考えます。
電子カルテ本体の購入に係るイニシャルコストについては、システム稼働→検収→売上となれば終了です。そのため、システム稼働後になんらかの事情でアプリケーションの継続利用が難しくなった場合には保守フェーズでの訴訟ということになりますから、保守料金の支払いを巡って係争することとなります。
しかし、利用者側である病院の抱える問題は保守料金の支払い云々ではなく、蓄積された診療情報が継続利用できるのかどうかが本題となりますから、 本契約にあたっては下記内容について書面による説明を求め、契約条項として盛り込んでおくことをお勧め致します。
⒈ 今回の販売窓口であるE社がB社の事業継続性について問題なしと結論づけた根拠の提示。
⒉ 販売窓口であるE社の販売責任に関する契約条項としての明文化。
ー⑴ 万が一B社が事業継続不能となった場合、どのようにアプリケーションの継続性を担保するのか。(製品サポートはどこが継承するのか。またどのような引き継ぎ方法を想定しているか。)
ー⑵ 販売窓口であるE社がアプリケーションのサポート(QA対応、バージョンアップ、障害対応等)を引き継ぐことが不可能な場合、他社製品へのデータコンバートについて担保できるのか。(電子カルテ3原則を踏まえて、蓄積された診療データを移行可能なのか。またその際の費用は。)
以上が私どもからの進言となります。
1999年に電子カルテが承認されてから16年が経過しようとしていますが、精神科病院の電子カルテ化において最も重大なリスクとは蓄積された診療データを継続利用できなくなることです。営業都合による販売製品の変更や、製品品質の問題、精神科電子カルテ事業からの撤退や企業倒産など、さまざまな理由で現在使用している電子カルテを使い続けることが難しくなった時に他社製品へ切り替えようとしても、データ移行がネックとなり八方塞がり。。。といったような深刻な事態に直面されている精神科病院様が決して少なくないという状況を、この業界の草分けたる弊社としても見過ごす訳には参りません。
これはB社のみならず、私どもも含めた全てのメーカーが同様に抱える課題であると認識しています。でも、だからこそ自らの継続性に関わる情報はガラス張りに情報公開し、電子カルテ化に踏み出そうとされている精神科病院様の不安を少しでも解消するための具体的な取り組みをはじめることも我々精神科電子カルテメーカーに課せられた不文律だと考えます。
選ばれなかったメーカーがこのようなことを先生に申し上げることには勇気を必要と致しましたが、トップシェアメーカーを自負する我々だからこそ率直に進言させて頂くべきと考えました。
ともあれ、貴法人の電子化がスムーズに完了することを心よりお祈り申し上げます。
この度はご提案の機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。