先々週から、突発的に発生する咳に悩まされて、おそらくは25年ぶりくらいに、
耳鼻咽喉科にかかった。ひさしぶり過ぎて緊張した。
「どんな治療されるんだっけ」
「痛いのって、あったっけ」
「どんくらい痛いんだっけ」
「痛くないといいなぁ」
「……帰りたい」
と、徐々に弱気になる心を押し込めて、診察を待った。
結果。まぁ、あまり痛くなかった。
麻酔をするとは思わなかったね。塗るタイプのやつ。あれが、いいんだな。
で、もうこりゃあ「余裕っすよ!」っていうノリで2回目の診察に行った。
あ……痛い。鼻の奥にぐりぐりってやるのが、痛い。帰りたい。
そう思う瞬間瞬間が続く。苦しい、戦い。
しかし、己には、決して痛がることができない理由があった。
隣の診察台に、女子高生がおった。ちょっと、可愛いと思われるくらいの。
ここはね、大人の男、ダンディな男として、余裕をぶちかまさなくてはいけない。
別にJKが好きというわけではない。女子に、かっこいいところを見せようという
のは、男のサガなのだ。ロマンシングサガ。知ってる人だけ伝わればいい。
「あ、耳ん中、すっごい汚いね。掃除するよー」
先生。すっごい、とか、言わないで。
恥ずかしいし。女子高生の反応が気になったが、目の前の看護婦さんが
「ふふっ」
とほほえんだのが気になった。恥ずかしい。耳の代謝がめっちゃ良くて、
なんて言い訳もできない(実際、なぜかむちゃくちゃ耳垢が出るのだ)。
屈辱の、診察であった。いや、まぁそこまでのことはないんだけど。
で、己は鼻に当てる機械みたいなところに行く。先生は、女子高生の元へ行く。
「はい、今日の調子はどうですか?」
……………己への応対と、ずいぶんと違う。ブスッと、しとらん。
己なんか、なんなら自分から症状を説明しだしたしね!何も言ってくれないから!
しかし、だ。
先生も、やはり、男の子なのだ。ロマンシングサガなのだ。
己のようなオッサンでも、先生のような初老でも、男は、いつまでも、男。
夢を、追いかけ続けているのだ。
「女の子に、モテたい!」
という夢を。
そう、これこそ、ネバーエンディングストーリー。終わりなき旅。
明日も見ようぜ、終わらない夢を。
アディオス。