話があると伝えたら、
遊びに来いとの返事だった。

俺は朝から
アカシの家に向かっていた。

アカシの家に着くと、
庭先にバイクが3台並んでいた。

それをアカシとこてっちゃんと信男が
何やらイジっているところだった。

きっと引退集会で乗る
バイクなんだろう。

その光景を見たら、
やっぱり少し
疎外感を感じてしまった。

俺を見かけるなり、
アカシから話かけてきた。

「達也ぁ!美咲さんから全部聞いたんだろ?」

「…聞いたよ」

「わりーな!内緒にしちゃっててよぉ!」

「みずくせー」

そう言いながらも、
まだ美咲の口から
昨日の話が漏れていない様子に
少しホッとしていた。

こてっちゃんと信男は
手を合わせて俺に向かって
「スマン!」
という顔でウィンクをした。

「このバイク、どこから?」

するとアカシが信男に目をやった。

信男は俺に向かって
自慢げな顔でブイサインを出した。

俺は人差し指を曲げて、
盗んだんだろ?
というサインを出した。

すると信男は笑いながら答えた。

「借りたんだよ」

「はいはい」

「達也ぁ、手伝ってよ」

「わかった。何したらいい?」

「今からハンドル曲げっからよぉ、車体押さえててくれる?」

やっと仲間に入れた気がした。

でも皆が嬉しそうに
バイクを改造してる様子を見ていたら、
行きたい気持ちがまた
膨れ上がってきた。

「よっしゃ!一服すっか!」

アカシの一言で
皆手を止めてタバコに火をつけた。

俺はダメ元で
アカシに聞いてみた。

「美咲の引退集会さぁ、俺も行っていい?」

アカシは
俺の肩に手を回して
優しい声で語りかけてきた。

「達也ぁ、
俺はそうしてーんだけどよぉ、
それだけは出来ねーよ」

「俺がよえーから?」

「そうじゃねーよ」

「じゃあなんで?」

「今回は祭りは祭りだけどよぉ、
遊びじゃねーんだよ」

「…」

「もし他の族と
鉢合わせになったらよぉ、
誰も達也を守れねーんだよ」

「…」

「それによぉ、
俺は達也をもう
喧嘩に巻き込みたくねーよ」

「…」

我侭を言ってるのは
俺の方だ。

美咲やアカシが言ってる事が
正しかった。

上手く自分を納得させる事が
出来ずにいた。

目の前に
面白い事がぶら下がってるのに
見て見ぬふりが出来る程
人間が出来ていなかった。

美咲の晴れの舞台を
見られない悔しさと、
見届けられない罪悪感があった。

俺に残された答えは

「分かった」


そう言って
見送る事だけの
はずだった。

それを素直に
受け入れられる方法…

不器用な俺には
一つしか
その方法が無かった。


「なぁアカシ」

「なんだぁ?」

「…喧嘩」

「ん?」

「喧嘩だよ喧嘩」

「急にどうした?」

「喧嘩しようよ」

「誰と」

「俺と」

それを聞いたアカシの口は
半開きだった。


「マジだよ。
アカシに勝ったら
俺を連れてってくれる?」


次回