写真立てを
手にとって見たが、
俺は知らない人だった。

美咲の彼氏?
黙っていれば可愛いし、
美咲に彼氏がいるのも当然か…

親しげに
肩を抱き寄せ合った二人は
満面の笑顔だった。

明るく照らされた部屋を見渡してみた。

愚連隊の特攻服と、
旗があった。
旗の中心には愚連隊の文字、
その文字を囲うように
名前が書き連ねてあった。

他に目に付くものと言ったら
ベッドの下から
はみ出していた木刀位か。

部屋の壁が
くぼむようになった一面には
テレビとラジカセが
置いてあるだけだった。

階段を登ってくる足音が聞こえたので、
俺はとっさに
写真立てをテーブルに戻した。

「おーーーい!開けろー!」

「ガンガン!」

ドア越しに美咲の声と、
ドアを蹴る音がしたので
俺は急いでドアを開けた。
美咲はお盆に
ラーメンを二つ乗せて立っていた。

「じゃじゃーん!」

「おー!ラーメンだ!」

「食え!」

「作ったの!?」

「あたりめーだろ?」

「カップラーメンを持ってくるのかなって思ってた…」

そう言うと
すかさずお盆をもったまま
俺のケツを蹴っ飛ばした。

「黙ってくえ!」

「は、はい」

「下着でも物色してたんじゃねーのかぁ?」

下から俺を
覗き込むように言う
美咲の笑顔と
写真の笑顔がダブった。

口を開くと女らしさが
とたんに無くなる…
そこだけが残念だった。

「達也ぁ、テーブルの上片付けろ」

「これよせちゃっていいの?」

そう言って俺は
写真を指差した。

「いいよいいよ。ラーメン置けねーだろ?」

「わかった。これ、誰?」

「それかぁ、彼氏だよ」

予想は出来ていたが、
ちょっとだけ寂しさも感じた。

「なんで線香もあんの?」

「死んだんだよ」

次回
へ続く