「美咲!」

「なんだよ、早く部屋に行ってろよ!」

「何してんの?」

「ラーメン作るんだよ!」

友達とは言っても
まだ知り合って間もないし、
相手は男勝りだが女は女だ。

しかも初めてくる家で
俺は落ち着くことは出来なかった。

ためらっていると
美咲の声がした。

「達也ぁ!まだいんのかー?」

「いるよー」

「おもしれーもんがあるからよぉ、さっさと行け!」

「わかったー」

そう言って美咲は
俺が階段を登るきっかけを作ってくれた。

なさけねー。
自分でもそう思った。
何をためらう必要がある。

変に美咲を意識した自分が
少し恥ずかしくなった。
気楽にいこう。

俺は階段を登った。
美咲が言った通り、
廊下の先にはドアがあった。

ドアには
何かで突き抜いたような
穴が開いていた。

美咲の事だから
蹴破ったのだろう位に思った。

肩の力が抜けた俺は
迷わずにそのドアを開けた。

部屋の中は
まだ昼過ぎなのに薄暗かった。

ひとまず
こてっちゃんの部屋みたいに
ゴミの山じゃなくて安心していた。

黒いカーテンが締め切ってあり、
床は黒いじゅうたん、
他に目に付くのは
壁に寄せてある
小さなテーブルとベッド位だった。

おもしれーもんがあると言われたが、
特に見当たらなかった。

美咲が気を遣ってくれたんだなと思った。

俺は換気をしようと中に入り、
カーテンを開けた。

光が窓枠いっぱいに差し込んできた。
そして部屋の中を照らし出した。

改めて部屋を見渡すと、
さっき見たテーブルの上に
写真立てが一つ置いてあった。

美咲と身を寄せ合って写っていたのは
赤いリーゼントをした男だった。

その前には
灰皿と線香が置いてあった。

続く