初めての方プロローグからどうぞ
再会1話はこちら から
「やだよ俺」
そう言いつつも、
アカシや
愚連隊の女総長の
赤髪のリーゼントを
見てる俺にとっては
意識してしまう髪型だった。
「達也は髪なげーし、赤だし、やろうぜ」
「俺だけ?」
「だって俺、赤だけど坊主だし」
「まじか…」
「まじだよ。アカシさんぜってーよろこぶぜ!?」
それを言われたら俺は弱い。
「…やるか…」
「よっしゃ!決まりだな!」
俺は生まれて初めて
リーゼントをする事になった。
「でもやり方わかんねーぞ」
「大丈夫だよ。
俺いつも親父のセット見てるから」
俺達は公園のトイレに入って
セットを始めた。
クシなんて無いから
手グシでべっとりと
ポマードがついた髪をセットした。
鏡越しにワン公が
今にも吹き出して
笑いそうにしているのが見えた。
「ワン公…」
「ちょっと待って、今いい所だからよ」
「笑ったら殴る」
「かっこいいよ達也」
にやけ顔で答えるワン公と
鏡越しに目が合った。
殴ってやろうと思ったが、
アカシを喜ばす思いもあったのでグっと堪えた。
それが無かったら
殴ってたと思う。
「出来たーー!」
クシもドライヤーも無かったわりには
それなりの形になっていた。
「ワン公、どうよ?」
ニヤニヤしながらワン公が答えた。
「バッチリ!」
完全に嘘だなと思った。
後悔の念が湧き上がってきたが、
自分で鏡を見たら、
グシャグシャで不格好ながらも
嫌いな感じではなかった。
「ふぅ…いくかぁ」
「ヒョーーー!」
俺達は病院に向かった。
普段はさらさらの髪で、
前髪は目にかかる位に
伸びていたので、
髪を上げた事で
ちょっと視界が広くなった気がした。
スッキリした感じがして、
これも悪くないなと思った。
ただ一つ、
ワン公がニヤニヤしているのを除けば。
リーゼントをした自分は、
何か別人になったような感じがした。
自分とアカシを
照らし合わせてみたが、
到底足元にも及ばない感じがして
恥ずかさも多少あった。
「なぁワン公、これ絶対アカシ喜ぶんだろうな?」
「まちがいねーって!」
「喜ばなかったら…」
「なんだよ(笑)」
「なんでもねー」
心の中では殴ると言っていた。
少しして病院が見えてきた。
病院の前に
バイクが一台停めてあるのが見えた。
後部シートが反り上がった族車だった。
そのシートの裏には
でかでかと
狛江愚連隊と書かれていた。
昨日美咲が乗っていたバイクだった。
「達也!あれ!」
「昨日見たバイクだよ」
「まーじーでー!?」
「しかもあれ…総長のバイクだよ」
「ヒョーーー!来てんのかな!?
やべーーー!緊張してきた!」
「中入ってみようぜ」
「やべーー!達也!紹介してな!」
「舞い上がるなって(笑)」
そう言いながらも、
また会えるんだと思うと
俺自身ちょっと
嬉しい気持ちがしていた。
でも待てよ…
なんでこんな時間に来てるんだ?
もしかしたら
アカシに何かあったのかもしれない!
一瞬にして
頭の中が真っ白になった。
全身から
血の気が引くような感覚に見舞われた。
俺は急いで病院に入った。
次回
へ続く