初めての方プロローグからどうぞ


赤髪を追うように外に出たら外にはワン公は居なかった。


「達也ぁ、秀樹は来てないのか?」

赤髪は寂しそうな目で俺に問いかけてきた。


本当にこいつが分からなくなってきていた。


パンチに向けた鋭い眼光、
今の寂しい目。

同じ人間の目には思えない程の
差があった。


今思うと
キン肉マンのアシュラマンのような切り替わり方だった。
アシュラマンは
通常の顔、怒りの顔、冷血な顔の
3つの顔を持つ超人だ。
ただ、
アシュラマンと決定的に違うのは、
赤髪は悲しい顔もあることだ。


「来てるよ。おーい!ワン公!」

ゲーセンの陰から
ひょっこりワン公が
顔をのぞかせた。

「こ、こんにちわ」

「おー!秀樹!待ってたよ!呼び出して悪かったな!」

「い、いえ。大丈夫です」

「そんなに固くなるなって(笑)
取って食おうってわけじゃねーよ(笑)」


ワン公は
ゲーセンの中の様子を見てから
すっかりビビっちまってた。


俺は自然とこの赤髪の事を
もっと知りたくなっていた。


「呼び出して悪かったな。
あのな、昨日お前等の喧嘩見てたらよ、
俺嬉しくなっちゃってさ」


目じりを下げながら語りかけてきた赤髪に俺は切り返した。


「なんで止めたんだよ」

「あのな達也、
喧嘩は勝ち負けじゃねーんだよ。
そりゃ勝たなきゃ悔しいだろうけどよ、
そんなん関係ねーんだよ」

「意味がわからねー。納得いかねー」

「わかったよ。悪かったって。
俺の事はアカシでいいよ。
そっちのハゲ頭が
鉄矢、山本鉄矢。
山本小鉄じゃねーぞ(笑)
ツルツルのところはそっくりだけどよ!
で、パンチがノブオ、
安城信男」


「こらアカシ、誰が山本小鉄だよ」

スキンヘッドの鉄矢がアカシにツッコんだ。


「アハハ!いいじゃん鉄矢(笑)
こてっちゃんにしよーぜ。
覚えやすいよ」

アカシは笑顔が似合う男だった。


「そうだ、達也、ほんとはよぉ、
今日はゲーセンでお前等と遊ぶ予定だったんだけどよ、
中はあんなんだからよ、
釣りいこーぜ釣り!」


「自分でやったんじゃん」

「あ…そうだったな(笑)」

俺は友達と言われた真意を聞きたくて切り出した。


「友達って言ってたけど」

「わりー(笑)
勝手に友達にしちまってたな!
いやか?」

「俺ら小学3年、そっちは」

「中2だよ」

「他に友達いねーのかよ」


ワン公しか友達が居ない俺が
言えた台詞ではなかったが、
言ってみた。


「カンケーねーべ。俺はよ、お前等の男っぷりが好きになったんだよ」


「歳ちげーじゃん」


「いやか?
お前は歳で友達選んでんのか?」


「ちげーよ」


「じゃあ決まりだな」

アカシは強引だったが、正論だった。


「秀樹も俺と友達になってくれっか?」

「は、はい!」

「よっしゃ!じゃあ多摩川行くぞ!」

小学生2人と中学生3人。
傍から見たら変な組み合わせだった。