「ハイ~、そこまで~」

赤髪のリーゼントの男と、
スキンヘッドの男が近づいてきた。

見ると原付が俺達の後ろに横たわっていた。
「相変わらず馬鹿力だなおい」
赤髪の男がスキンヘッドの男に話しかけた。

ゲーセンの前は自転車やバイクの
駐輪スペースになっている。

今、原付が倒れている場所まで
ゆうに3メートルはある。

原付はどうやらこのスキンヘッドの男が
投げ飛ばしたようだった。

「おめーらもうやめとけ」
「なんだコラァ!?」
ゆうすけが赤髪の男に食って掛かった。

そして赤髪の男と目が合った次の瞬間、
ゆうすけは我に返ったように口にした。
「アカシさん…スカ…?」
「おめーら、もう帰れ」

「…はい…」

そう言って倒れている仲間を引き起こし、
赤髪のリーゼントの男へ会釈をして
ゾロゾロと帰っていった。

赤髪の男が倒れている俺の腕を掴み、
ぐっと立たされた。
俺は自分の身体がまるで風船のように軽く持ち上げられる感じがした。

「根性あるなお前等。
名前はなんつーんだ?」

「…自分から名乗れよ」

「おー(笑)いいねぇ、
お前が正しいよ。
俺は丹至(あかし)。
俺は狛江北中の沼田丹至ってんだよ。
お前は?」

「タツヤ。井口達也」

「そっちのボロボロのやつは?」

「ワン公」

「おー(笑)ってこら。
名前だよ」

「山崎秀樹」

「よし!達也、秀樹、
お前等今日はもう帰れ」

「…なんで止めたんだよ」

「おまえなー(笑)いいから帰れ」

「…」

「何だよ納得してねーみてーだなぁ」

「…してねー」

「わーった。止めて悪かったな」

「…」

「明日またここ来いよ」

「…」

スキンヘッドの男に
ワン公はひょいと起こされていた。

「じゃあな!明日こいよ~!」

俺とワン公は家に帰るわけでもなく、
自然と多摩川に向かっていた。

tamagawa