初めての方プロローグからどうぞ


「ぎゃーーー!」


ヒデキが俺を蹴っていた奴の一人に

おんぶの格好でしがみついている。


「イタタタタ!」
耳を噛んでいた。

「離せてめえ!」
一瞬俺への攻撃が止んでいた。

俺はそのスキに立ち上がり目の前の奴の金的を蹴り上げた。


俺は叫んだ
「ヒデキ!」
「ヒョーーー!」
ヒデキは噛むのをやめ、

走り出した。
俺も走り出していた。

どれ位走ったか分からない。
あいつらは追ってくるのを諦めたようだった。


路地裏で肩で息をしながら

ヒデキと顔をあわせた。
「はははは!」
二人で大笑いした。
「なんだその顔」
二人ともひどい顔をしていた。


ヒデキが笑った時に

歯に血がついてるのが見えた。


「ヒデ、血がついてんよ」
ヒデキが手で血をぬぐった。
「うえ、きたね」
そう言ってツバを吐いた。

「これでワンって言ったらヒデは犬だな」
「アオ~ン!」
「ワン公もっと吠えろ!」
「アオ~ン!」

すっかり日が暮れかけていた。


ゲーセンに自転車を取りに戻るもの面倒くさく、

また新しい自転車を調達して

2ケツ(二人乗り)で帰路についた。


じゃんけんで負けたヒデキが自転車をこいだ。


ヒデキが口を開いた。
「タツヤ、痛かったな」
「ああ」
「タツヤ、おめーつえーな」
「よえーだろ」
「あのゆうすけってやつ倒したじゃん」
「ああ」
「やっぱつえーんだよ」
「つえーやつは逃げねーよ」
「そっか」

「タツヤ、強くなりてーな」
「ああ」

「ワン公」
「ワン公じゃねーよ」
「いいじゃん」
「よかねーよ」
「煮干しでも食って歯を鍛えなくちゃなぁ」
「なんで俺は歯を鍛えるんだよ」
「ワン公だからだよ」
「うるせー」

からかっただけだったが、

ヒデキはとにかく何でもいいから強くなりたかったんだろう。


次の日から袋に煮干しを入れてポケットに入れていた。

暇さえあれば食ってたよ。


俺も単純だが、

ヒデキ、いや、ワン公は

俺の上をいく単純な男だった。


夜風を浴びていると体中の痛みを忘れられた。

それどころか何故か心地よかった。


俺たちはやつらへのリベンジを約束してその日は解散した。


第5話ワン公(5) へつづく