スーパーマリオ 1 | S.H@IGTのブログ

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大阪府泉佐野市にある、ゲートタワーIGTクリニックの院長のブログ

その男、顔が浅黒く、チリチリの短い毛で、頭は小さく、足は長い。 

顔のパーツは完璧なバランスを保っている。

背は高く、胸板は厚く、ショーンコネリーのように胸毛が生えている。

お腹には縦に3本の筋が入り、黒い下着を履いている。

いつも、オーデコロンのイイ匂いもする。

一緒のロッカールームで着替えていたので、この描写には間違いはない。

そのうえ何のために生やしているのか、鼻の下には切り揃えた髭がある。

ニタっと笑うと少しクラークゲーブルみたいだ。

 

その男、名前はマリオ、パナマから来た医学研究員で大学院生である。

 

スイスから大学に帰った私は、マリオの指導教官を拝命した。

どうも、それまで彼を教える役目の医者がいなかったらしい。

私が少しは英語が喋れる男であったので、マリオは何でも話してくれる。

マリオはとても喜んでくれた。

それはそれで私もかなり嬉しい。

 

私は彼にいろいろと放射線医学について教えたはずである。

一緒にウサギの実験もしたはずだし、カテーテルの扱い方も教えたはずだ。

私の指導で彼は、『肝動脈塞栓術後における胆嚢壁の障害についての考察』とかいう論文まで書き上げ、医学博士の称号を得たはずだ。

立派な研究態度であったと思う。

でも、そんなこんなの仕事の話はもうほとんど記憶にない。

 

私の記憶にあるのは、彼がとても女の子にもてたことだ。

ウチの奥さんなんかも、『マリオ、カッコイイ』と少し遠くを見ながら言う。

大学病院の看護師さんなんか更に具体的に、『マリオ、首筋がセクシー…』とかなり黄色っぽい声で言う。

 

そんなことは男の私にはどうでもよい。 が、私の脳の記憶野に強烈に食い込む思い出がある。

彼の帰国が間近になったある日、みんなで飲みに行こうとマリオ、行きつけのショットバーでの思い出だ。

 

つづく。