私の車には車載カメラが付いていて、私が正しい運転をしているのかチェックしてくれている。
それだけではなく、運転中の私の顔を見ているらしく、私がよそ見をすると、「運転中は前方にご注意ください」ともっともらしいことを言う。
最近そのカメラが「お疲れではありませんか」と盛んに言うようになった。
おそらく眠たそうな顔をしているのを見られたかと思い、目をしっかり開けて運転を心掛けたが、瞼を開けようとしておでこにまで力がはいり、これが結構しんどい。
私の家内は眼科医なので、それとなく聞いてみると、「あんた、だいぶん瞼が下がってきたね、歳やね、、」とそっけない。
どうしたらよいのかもう一度聞くと、「手術したら?」とこれまたそっけない。
私の外来に美しく若そうな美容整形外科医が、健康診断を受けに来た。
私はカルテを見て、“へえー、こんな歳なんだ!”と思ったが、決して口には出さない。
CT検査と血液検査でチェックを行い、「身体の内も外も若くて綺麗です」とコメントさせていただいた。
彼女は、私の顔をじっと見て、「先生、眼瞼下垂の手術をされたらいかが?」と私に問う。
「手術をすれば、10歳は若く見えますよ」。
魅力的な提案を戴き、手術法などいろいろとお聞きした。
彼女にお願いすれば、両眼を一度に手術し、数か月で目的を達成できるとのことである。
家に帰り家内に再び問うと、「そんなの美容外科でやることないわよ、、保険でできるんだから」と少し具体的な返事が返ってきた。
彼女はさらに踏み込んで、「阪堺病院なら上手な先生が週に一度きてるよ」と教えてくれた。
保険で治療を受けるには病気であることを証明する診断名が要る。
家内は「両側(老人性)眼瞼下垂症による上眼瞼の下垂」という立派な病名をつけ、紹介状をしたためた。
諸富先生の診察日、仕事を休んで受診した。
なんのことはない、「奥様には、上眼瞼下垂の患者さん、いっぱい送っていただいています」とお礼を言われた。
「両眼、立派な眼瞼下垂です」と言われ、手術をする方が良いと勧められた。
「車載カメラにも言われました」とお話しすると笑いながら、とても大事なことを教えていただいた。
「瞼が下がってくると、赤信号を見落し易くなる、でも瞼が上がらないものだから、どうしても顎を挙げてみるようになる、顎を挙げると、信号は見えても、歩行者を見落とすことになりかねない」
これは極めて忌々しき問題であり、立派な病名が付くべき状態であることは明らかだ。
10歳若く見えるようになる、に比べて、かなり自分で納得できる理由が見つかった。
「手術、どうされまず?」の質問に対して私はタチドコロに、「お願いします}とお答えした。
車載カメラにはもう気を使ってももらう必要はなくなるだろう。
続く、、、、