枯れゆく前に果てましょう。
誰より大きく艶やかに
咲いたそのとき消えましょう。
「短く太くってこと?」
こくり。
「長く太くじゃなくて?」
こくり。
「長く細くても駄目なの?」
こくり。
ふむ。とレンは考え込む。そういうもんだろうか。
「なんで短いほうがいいの?」
「……るの……」
小さな声が掠れた。
「生きるの、とても、辛い、から」
途切れ途切れに紡がれる言葉は痛々しかった。
「苦しいの、もう、嫌だ、から。でも、何も、無いまま、死ぬのも、嫌で……」
それでは何のために生まれてきたのかわからないから。
「何か、やってから、死にたい……」
何か一つで、一つでいいから。
生きた証を遺したい。
その気持ちはわかる気がしたから、レンは「そっか」とだけ言った。
目を伏せて、夢の中でまで怯えたように小さくなって。
少女はレンを見ようともしない。
大丈夫なのに、と思う。
責めないから。決して傷つけないから。怖がらないでいいのに。
言葉を口にする代わりに、レンはただ目の前の光景を見つめた。
青く透き通って、遥か遠くまで広がっている海。
水平線を赤く染めて、海に溶けていこうとする真っ赤な太陽。
少女の思い出の中の哀しいくらい綺麗な場所。
夕日は大きく、温かい気がするからレンは好きだ。
「大きいねぇ……海も……太陽も……」
そう呟くレンの横顔を少女はこっそり見つめる。
綺麗な綺麗な人。
「僕もこんな風になりたかったなぁ……」
「……わた、し、は」
言葉が泪みたいに零れ落ちた。
「あなた、みたいに、なりたかった……」
美しくなりたかった。
強い自分でありたかった。
優しい人になりたかった。
大輪の赤い薔薇のように
咲き誇る華でありたかった。
「君に薔薇は似合わないね」
静かな声が胸に刺さって、思わず下を向いた。
そんなこと知っているのに。知っていたはずなのに。
自分はまだ夢が見たいと思っているのだろうか。
それ以上何も言わないで。
聞きたくない。お願いだから。
そう思ったとき、頬に何かが触れた。
思わず目を開けると、優しい微笑を浮かべた青年が自分に花を差し出していた。
「ほら、スミレのほうが似合う」
青年の瞳と同じ色をした、小さな花。
頬に触れていたのはスミレの花だった。
「艶やかな薔薇は人を酔わせるけれど、可憐な花は人を癒すって知ってるかい?」
甘い声は何処までも優しい。
君の。
声はとても優しいから。
信じてしまいそうになる。
信じたいと思ってしまう。
こんな醜い自分でも、何かできることがあるのだと。
「僕は薔薇よりスミレのほうが好きだよ」
少女の顔が初めて綻んだ。
「やっぱり、私、は……」
あなたみたいになりたかった。
一人になって、レンは小さく呟いた。
「僕も君のようになりたかったよ……」
華ではなく花でありたい。
いつも人のすぐ傍で、咲いている、花で。