6月8日に太田市運動公園野球場で行われた都市対抗野球大会北関東予選第2代表決定トーナメント、茨城トヨペット×茨城日産の観戦記です。

波乱の北関東予選。第2代表決定トーナメントでは日立製作所、日本製鉄鹿島が代表決定戦に進めず敗退。第2代表決定戦進出を決める試合は日立を破った茨城トヨペットと、鹿島を破った茨城日産の「カーディーラー対決」となりました。初のドームに近づくのはどちらになるでしょうか?

<スタメン>

【先攻:茨城日産】

①センター 石毛

②レフト 佐々木

③ファースト 藤江

④キャッチャー 青木

⑤サード 川﨑

⑥セカンド 細井

⑦ライト 寺元

⑧DH 田中

⑨ショート 佐藤

先発ピッチャー 長谷川

【後攻:茨城トヨペット】

①セカンド 近藤

②サード 山田

③DH 上杉

④ファースト 宮里

⑤ライト 高嵜

⑥センター 武藤(健)

⑦キャッチャー 峯尾

⑧レフト 比留間

⑨ショート 斎藤

先発ピッチャー 髙﨑

<試合概況>

両チームとも塁上に走者を賑わせながらも、あと一本が出ず序盤はスコアレスで終わります。

均衡が破れたのは4回裏。茨城トヨペットは4番宮里のヒットと四球でチャンスを作ると、7番峯尾の内野ゴロが野選となり1点を先制。

さらに9番斎藤がライトオーバーの2点適時二塁打を放ち、リードを3点に広げます。

茨城トヨペットは6回にも6番武藤(健)の二塁打を足掛かりに、8番比留間の適時打で追加点を奪います。

茨城トヨペット先発の髙﨑は7回まで茨城日産打線を被安打3の無失点に抑えており、6回の追加点で勝負あったかと思われました。

しかし8回表茨城日産は1番からの好打順を活かし、2本のヒットと四球で無死満塁のチャンスを作ります。ここで茨城トヨペットベンチは先発髙﨑を諦め、2番手に小野を投入します。

ここから試合の流れが大きく茨城日産に傾きます。

まずピッチャー小野のボークで1点を返すと、その後3連続四死球、2つの押し出しで1点差となります。

さらに1死満塁の場面で茨城日産ベンチが選択した策は、8番田中のスクイズ。これが野選となり同点に。

続く1死満塁の場面で、9番佐藤に送られたサインはなんと2者連続のスクイズ、今度はエラーを誘い、勝ち越しに成功。

さらに1番石毛の適時打で1点を加え、茨城日産がこの回6点のビッグイニングで逆転します。

これで試合の流れは完全に茨城日産に傾き、茨城トヨペットの残りの攻撃も反撃及ばず。6-4で茨城日産が勝利し第2代表決定戦にコマを進めました。

 

<注目選手など雑感>

日産にしてみれば「勝ちに不思議の勝ちあり」、トヨペットにしてみれば「負けに不思議の負けなし」の展開になりました。

茨城日産は8回に相手のミスにもつけ込み、ビッグイニングを作りました。今大会、日本製鉄鹿島戦では9回に同点本塁打で追いついた後サヨナラ勝ちするなど「ミラクル」を起こしてきましたが、この試合の8回もまさに「神ってる」という感じの攻撃でした。

そのキーマンとなったのが1番のルーキー石毛。

8回の大逆転の起点となるヒットと6点目となる適時打を含め3安打1四球1打点の活躍。筑波大時代も切り込み隊長として活躍しましたが社会人でも持ち味を発揮しています。特にこの試合ではファウルで粘って粘って出塁につなげるしぶとさを見せました。

また、8番田中、9番佐藤の連続スクイズという相手が嫌がるような攻撃も日産自動車でプレーしたベテラン渡邉監督の経験からできる采配で、それに答えた田中、佐藤もお見事でした。

茨城日産は翌日の第2代表決定戦で9回までリードを奪いながらも追いつかれ、タイブレークで1点をリードしながら、その裏に2点を奪われ逆転サヨナラで惜しくも東京ドーム行きの切符を逃しました。しかし、昨秋の日本選手権予選でJR東日本から「金星」を奪っており、着実に力をつけてきているのは間違いないですね。

敗れた茨城トヨペットにとっては「魔の8回」になってしまいました。結果論となってしまいますが、翌日の第2代表決定戦に向けて日立製作所から完投勝利をマークした左腕中島を温存した継投に出て裏目に出てしまいました。逆転された後結局中島を投入、後続を抑えたことからもよりその思いが強くなってしまいます。しかし、4点差ですからね…。1点、2点のリードだったら無死満塁の場面で中島投入もあったと思いますが、難しいところですね。

その中島は結局1回2/3を無失点。

140キロ中盤のストレートを軸に、日立相手に好投した実力を見せてくれました。

野手陣では6番の武藤(健)が2安打1四球2得点と活躍。

体格に恵まれ、今大会では2本の本塁打も放ち、センターの守備も固い身体能力が高そうな選手です。埼玉秩父の小鹿野高出身の珍しいキャリア。小鹿野高校は元プリンスホテルの石山建一氏が2012年から外部コーチを務め、「山村留学制度」で県内各地から集まった選手を指導していますが、武藤もその「教え子」の一人なんでしょうね(出身中学を見ると筆者と同郷の入間市のようです)。全国の舞台でも活躍を見てみたい選手です。

日産もトヨペットも社業は「カーディーラー」で選手たちは「セールスマン」として社業と野球を両立しています。ともに水戸市を本拠地としており、いいライバル関係を気付くことで北関東地区の激戦化につながっていきそうです。今回の北関東予選を大きく盛り上げた両チームに大きな拍手を与えたいと思います。

 

茨城日産000000060=6

茨城トヨ000301000=4

(日)長谷川、大西、濱崎、高木-青木

(ト)髙﨑、小野、鈴木(重)、中島―峯尾、大松

【勝利投手】濱崎

【敗戦投手】小野

【二塁打】

(ト)斎藤、武藤(健)