11月29日に東京ドームで行われた第91回都市対抗野球大会2回戦、四国銀行×パナソニックの観戦記です。

4年ぶり19回目の出場の四国銀行。1回戦のハナマウイ戦で2007年以来の初戦突破を果たし、都市対抗野球通算2勝目をマークしました。日本選手権では最高成績4強の実績がありますが、都市対抗野球では初の8強入りを狙います。

対するは54回めの出場の名門パナソニック。日本選手権では2度の優勝があるものの、都市対抗の最高成績は1960年の準優勝が最高成績。通算成績も1回戦の勝利を加えても47勝53敗と負け越しているのは意外な感じがします。悲願の初優勝を狙うためにも負けられない一戦です。

 

<スタメン>

【先攻:四国銀行】

①DH 山中

②センター 真田

③ファースト 小林

④キャッチャー 南

⑤サード 平瀬

⑥ショート 水野(※JR四国から補強)

⑦レフト 柴田

⑧ライト 橋川

⑨セカンド 下村

先発ピッチャー 菊池(写真下)

【後攻:パナソニック】

①ライト 上田

②セカンド 諸永

③レフト 小峰

④ファースト 片山

⑤サード 法兼

⑥DH 那賀(※三菱重工神戸・高砂から補強)

⑦ショート 松根

⑧キャッチャー 三上

⑨センター 藤井(健)

先発ピッチャー 榎本(写真下)

両チームとも6番に補強選手を起用、パナソニック3番の小峰はルーキー。先発ピッチャーは四国銀行が1回戦完封勝利の菊池、パナソニックは左腕の榎本というマッチアップになりました。

 

<試合概況>

先にチャンスを作ったのはパナソニック。3回裏先頭の7番松根が二塁打、8番三上がショートへの内野安打で無死1・2塁のチャンスを作ります。しかし9番藤井(健)の初球に2塁走者松根が飛び出し、四国銀行キャッチャー南からの牽制で走塁死、藤井(健)の打球は痛烈でしたがサード正面のライナーで1塁走者三上が戻れず併殺と拙攻でチャンスをつぶします。

すると試合の流れは四国銀行へ。直後の4回表、3番小林が死球を受けると4番南がライトオーバーの二塁打を放ち、1塁から小林が生還し1点を先制します。

さらに6番水野にも適時二塁打が出てこの回2点を奪い試合の主導権を握ります。

四国銀行は4回まで先発の菊池が無失点にパナソニック打線を抑えると、5回からJR四国から補強の山本に継投。山本は走者を出しながらも5回、6回、7回とパナソニック打線に得点を許しません。

追い詰められたパナソニックは8回裏、2つの四死球でチャンスを作ると途中出場の三菱重工神戸・高砂から補強の星の適時二塁打で1点を返し、さらに1死2・3塁の一打逆転のチャンスで打順は3番小峰、4番片山に回ります。

同点を許したくない、四国銀行は外野が前進守備体型を取りますがここで、小峰の打球は浅いライトフライとなり前進守備が功を奏し、タッチアップができず2死2・3塁。続く片山もファーストフライに打ちとられ、パナソニックはチャンスを活かしきれません。

結局試合はこのまま四国銀行が逃げ切り、四国銀行としては初の、四国勢としても1977年の丸善石油以来43年ぶりの準々決勝進出を決めました。

<注目選手など雑感>

正直なところ、試合前は四国銀行には申し訳ありませんがパナソニックの一方的な展開になるかと思ってましたが、投手陣が粘り強い投球を見せ、打線もワンチャンスを活かす形でパナソニックを降しました。

勝利に大きく貢献したのはJR四国からの補強勢。

5回からリリーフした大卒2年目右腕の山本は140キロ台後半の力のあるストレートを軸に5回1失点の好投。

1回戦完封の菊池を4回で降板させたときはどうなるかと思いましたが、しっかり試合を作り最後まで投げ切りました。

打線では同じくJR四国からの補強の高卒2年目の水野が3安打1打点をマーク。

高卒ルーキーの昨年の大会でも本塁打を放っており、このまま成長を続けるとドラフト解禁年となる来季大いに期待できそうです。

四国銀行のプロパー選手も負けてはいません。4番キャッチャーで180センチ・110キロの体型とまさに「リアル・ドカベン」の大卒2年目・南は先制打に投手陣を好リードで勝利に貢献しました。

四国銀行の選手たちは全員が「バンカー」として本社業務として貴重な戦力となっており、週2回は朝からフルタイム勤務で丸一日練習できるのは土日だけと、会社の配慮で一日の大半を練習に割くことができる強豪チームとは練習環境に差があります。南が試合後に「うちのように練習時間が短い企業でも勝てるというところを見せつけたかった」とコメントしたように、ドラマ「半沢直樹」が話題となった今年、「バンカー」たちの「倍返し」に期待したいですね。準々決勝の相手は強豪NTT東日本、「バンカー」と「駅員」のタッグ、「オール四国」のチームでどんな戦いを見せるか注目したいです。

敗れたパナソニックは「負けに不思議の負けなし」の展開、攻撃陣にあと一本が出ず拙攻も目立ちました。投手陣は4投手の継投で四国銀行打線を4回以外は封じていただけにもったいない試合展開でした。

そんな中で印象に残ったのは4番手で登板した小屋。

162センチ・55キロという一般男性と比べても小さい体を目いっぱい使って、時折帽子を飛ばしながら140キロ台の速球を投げ込み、1回を無失点。敗退したことでこの試合が「野球人生最後の登板」となるようです。この大会を最後に野球人生に区切りをつけ、「ボートレーサー」という第2の夢をかなえるべく、養成所の試験を受けるそうです。野球では不利にもなった小柄な体もボートレースでは有利に働くことでしょうね。第2の人生での活躍を期待したいなと思います。

 

四国銀行000200000=2

パナソニック 000000010=1

(四)菊池、○山本-南

(パ)●榎本、藤井(聖)、鈴木、小屋-三上

【二塁打】(四)南、水野

      (パ)松根、那賀、星