【セルフコントロールと鞘の内】

剣護身術には、護身を段階的に考える
「護身術五段階理論」
という考え方があります。
その中の3番目に位置するのが、
「セルフコントロール」です。
護身というと、技を使って相手から身を護ることをイメージする方も多いと思います。
しかし、本当に自分を護るためには、危険が起きた時に「自分自身をコントロールする力」も非常に重要です。
私は介護の現場で20年弱、仕事をしてきました。
医療・介護・福祉の現場では、人間関係や利用者様・患者様との関わりの中で、思い通りにならなかったり、腹立たしいことが起きたりすることもあります。
しかし、そこで怒りの感情のままに言葉や行動を出してしまえば、取り返しのつかない結果につながることがあります。
実際に、介護施設で働いていた時に、感情を抑えきれずに失敗してしまった人を何人も見てきました。
そして、私自身も危うい経験がありました。
その経験を通して、私は身をもって
「自分を護るためには、自分自身をコントロールする力が必要なんだ」
と感じるようになりました。
これは護身術の場面でも同じです。
誰かに因縁をつけられたり、絡まれたり、腹立たしいことをされた時。
怒りのままに言い返したり、行動したりすれば、自分からトラブルを大きくしてしまう可能性があります。
本来なら避けられたはずのトラブルに、自ら入り込んでしまうこともある。
だからこそ、危険な状況ほど、
「どう反応するか」ではなく、「どう自分をコントロールするか」
が重要になります。
剣護身術では、稽古の中で「丹田呼吸法」という呼吸法を行います。
呼吸を整えることで、自分の心身の状態を整え、感情に振り回されず、自分自身をコントロールするための一つの方法として実践しています。
私自身も継続して実践する中で、その効果を感じるようになり、稽古だけではなく、仕事や日常生活の中でも役立つ場面が増えてきました。
剣護身術は、単に「相手を倒す技術」を学ぶものではありません。
危険を察知し、避け、そして必要な時には身を護る。
そのために、まず自分自身の心と身体を整える。
自分を護るとは、自分自身を律することから始まる。
これは、私が剣護身術を通して大切にしている「武士道」にもつながります。
武士道とは、ただ強くなることでも、戦うことでもありません。
感情に流されず、自分を律し、正しい行動を選ぶこと。
怒りや恐怖に支配されるのではなく、自分の心を自分で扱うこと。
そして、できる限り争いを避け、必要な時には大切なものを護る。
「鞘の内で事を納める」
剣を抜かずに済むなら、それに越したことはない。
そのために心身を鍛え、自分を律する。
それもまた、現代に生きる私たちに必要な「護身」であり、武士道の心なのだと私は考えています。
剣護身術が伝えるのは、技だけではありません。
仕事にも、家庭にも、日常生活にも活かせる「自分を護るための心と身体の使い方」。
それも剣護身術の大切な一面です。