「カレーにあう日本酒」のパラドックス | 侘寂伝文(わさびやブログ)

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カレー日本酒01  

過日 大盛況だった“タカシマヤ日本酒祭”を訪れた折 変わった企画に興味をそそられまして 

会場横にて日替わりでカレー屋さんが出張し 様々な清酒と提供する「カレーと日本酒の取り合わせ」 
 
カレー日本酒02  
折しも米鶴酒造蔵元会開催を週末に控えていた事情で この趣向に便乗してみようかと遊び心が... 

そんな気まぐれから わさびやでカレーと清酒を合わせた料理を提供した訳です(コース中の一品で) 

 
多くの方が言われていた通り「カレーは日本酒とは合わない」 そうなんです確かに 

カレーライスは日本に伝来して150年と歴史も浅いながら 今や世界から“日本料理の一角”として認知されるまでになった料理 日本国内だけでも専門店の数は綺羅星の如く 言うまでも無い人気食ですが 

 

構成材料の構造上 日本酒の酒質とあわすには程遠い お互いご縁の無い料理と飲み物 

カレー専門店のプロが美味しく作れば スパイシーに仕上げれば それだけ清酒とは咬み合わないのです 

(あくまで日本人の味覚視点の意見です) 

 

プロの料理人からすれば「カレーに日本酒なんて何がしたいの?」と批判されそうですが これをパラドックス(逆説的)に捉えれば 「目の前の清酒に合うような形のカレー料理を作成する事」も可能ではないかと 

 
カレー日本酒03  

実際に会場でも食しました カレーは文句無しに美味しかったですが日本酒を合わせる意図が不明瞭です 

前述したように カレーが美味しいければ 比例して日本酒を合わせる意味を成さないのです 

 

「ただお腹が空いていただけでしょ」というご指摘はさておき(笑) 
 
カレー日本酒06  

東北を代表する名門蔵の杜氏がわざわざ“カレーのための酒”を少量限定で仕込まれました 

酒造りのプロが真面目に取り組んだ清酒が目の前にある訳ですから 料理人の立場としてそれに応えたい 

数多の食材 調理.提供法が可能ですが 酒会の流れを考慮してシンプルな調理法を選択しました 

 
カレー日本酒04  
カレー日本酒05  
カレー日本酒07  

そう コロッケです 清酒と合せてどうだったか...は実際食された方々のみ知るところです 

 

よく油物やこってりした濃い味の料理と酒を摂り合わせる時「さっぱり洗い流す」表現を見受けますが そういう不毛な感覚でなく 単純に食べて飲んで 1つに合せて“美味しい”を最優先設計しました 
 

料理と清酒を摂り合わせる時 基本の1つに「空腹感を増長させる料理は控える」と良く口にしていますが そのタブー項も克服する意味で 量感的にコロッケで最善だったのかなと振り返っています 
 
お客様方からお褒め頂いた事は勿論 一番嬉しかったのは米鶴/梅津社長に評価頂いた事です 

出来れば須貝杜氏にも直接味わって意見をお伺いしたかったですが(笑) 

 

こういう「ハナから無理だ」という否定観念を横に置いて パラドックスで肯定的に創造する事 

勿論お客様の評価が第一ですが 料理人をしていて『楽しい』と実感した一コマでした