[料理講習]可食率 | 侘寂伝文(わさびやブログ)

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ここに目方2㌔の鯛が1匹あります 勿論このままの状態ではお客様に料理として提供できません 通常なら水洗いをし3枚卸しなど下処理を経て造り(刺身)や煮付け/塩焼きなどに加工します 

 

下処理を施し加工した時 例えば表面のぬめりや血.内臓でも食に適さない部位などは破棄するので 最初2㌔だった鯛は実際には2㌔から破棄した幾分かを除いた残りの可食部位を提供する事になります 

 

この総量(100)から破棄した部分を引き算した(食べれる箇所)割合を可食率(可食部率)と言います 

 

今回は分かり易い“鯛”を例に挙げていますが 全ての食材に“可食率”は適応します 飲食店で提供している料理は食材毎の可食率に基き 他に付属する食材との原材料費(原価)や 料理を提供するのに必要な人件費/光熱水道費など各諸経費を計上し値段を算出しています(その料理を提供する場所の土地代や素材の付加価値も価格に反映されます) 

 
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1匹の鯛を造り(刺身)だけで販売すると仮定した時 造りの売上合計金額が購入時の金額を上まらなければ 単純に損をした事になるので 造りの販売価格はそれ相応の値段(高値)で反映されます 

 
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他方 1匹の鯛を造りだけでなく 頭の部位は煮付け 中骨の部分は塩焼きや潮汁 また内蔵などは時雨煮 鱗は塩干しして煎餅など 余す所なく加工し販売すれば全体の価格を引下げてもお客様が充分に納得でき 商売側は購入時の金額を上回る売上げを獲得出来ます 

 

要約すると 1匹の鯛の可食率を理解した上で どう処理/販売するかによって利益の幅は大きく変わり またお客様に与えるイメージも大きく変わります 調理師―特に献立を作成したり数字を管理する立場の人 また自分の店を持ちたい等 将来のビジョンを持つ若い料理人さんは 知らなければ話にならない必要不可欠な項目です 

 

 

この可食率 実は食材毎に法則性が存在します 

 

市場に食材を買出しに行く折 春夏秋冬その時の食材を仕入れ毎に計量し 仕込みと並列に可食率を計算したものを20余年蓄積し解析していますが 例えば魚介なら産地ごとの相場は違えど品目別に可食率の推移が定量化している事がわかります その数値を体(目)が覚える事で様々なメリットが生まれます 

 

店頭で何回かお話させて頂きましたが 卸市場では魚介を購入する時いちいち手にとる事はありえません なぜなら手が品物に触れたその時点で(その品物を買った)という事になるからです 値札も詳細も記されていない卸市場で並ぶ食材の良し悪しを的確に判断するには その品物に対する知見(経験)も勿論ですが (この品物は重さがこれ位で可食率はこれ位だろう)と瞬時に見切る目が必要です 

 

料理は切ったり焼いたり煮たり押したりするだけではなく こういった食材の仕入れ能力がその店の品質/鮮度を左右します 盛りつけや器である程度見栄え良く出来ても 食べる人はしっかり中身を見ています こういう事項は頭で理解するのではなく 体で積み重ねて体験して初めて可能なので 商売を考えて行動するなら 是非今からでも学んで欲しいと思います