Raphanus sativus var. longipinnatus 味辛大根 アジカラダイコン
古来より親しまれている代表的な根菜 大根ですが 数多種の中で在来種より繊維が
きめ細かく小さ目 辛味成分を多く含むものを総称して“辛味大根”と呼称します
辛味成分イソチオシアネートが代表される成分ですが 総合的な栄養分も豊富で
ビタミンA.ビタミン群.カロチン.カリウムを多く含み 健康に良い野菜で知られています
ただ辛いだけでなく 旨味.甘味も豊かで蕎麦との組み合わせは有名ですね
私共の様な魚介に特化した日本料理屋でも重宝します 特に冬季 脂の乗った寒鰤や
牡蠣.鱈白子などと抜群に相性が良いので付合わせには欠かせない素材です
自分はその中でも京野菜として馴染んだ“味辛大根”を昔から愛用しています
秋蒔きが一般に知られる味辛大根ですが 葉勢が大人しく 春蒔きの大根も繊維が
柔らかいので ほぼ通年 料理に用いる素材として活躍します 生食専用ですが
辛味大根のツール
辛味大根は何時どこで誕生したのでしょうか?平安時代の有名な伝記“和名抄”と
“本草和名”には(おほね)と別に「温菘 和名古保禰(こほね)」を挙げています 辛味大根の
存在を確認出来る最古の記録です この(こほね)に連なる大根は 江戸時代の書物に多く
登場し「今は国々里々種をとりて畠に作る」“百姓伝記”(1682)と 当時とても人気があり
全国各地で栽培されていたようです
こうした事もあって 日本の野生大根は栽培品種が野生化したものだとする説が長く主流と
なっていました しかし栽培品種とは別の野生種も存在するという説もあります その説を
とる専門家は福島県の会津地方や山形県の庄内地方に残る野大根に注目して現地を視察
“古今要綱”(1842)の記述そのままの野生種との出会いの記録を残しています