日本一のコンテナ会社といえば、日本郵船でも商船三井でも川崎汽船でもありません。




実はONEという会社です。


本社がシンガポールにあるので日本の会社とは言えないかもしれませんが、親会社は前述の商船大手三社です。


そもそもコンテナ船業界の波は激しく、コロナ禍は需要が多すぎて運賃高騰して、商船バブルが発生し、商船三社は配当利回りが15%くらいまで上昇しました。


かといえばリーマンショックのときには、世界的に政府が支援したり国内商船会社を合併させたりして無理やり生き残らせたくらいの苦境でした。


コロナ禍の業績に貢献したのがこのONEなのですが、コンテナ船業界は商船業界でも波が激しいのです。




ONEは2012年創業と若い会社ですが、その税引き前利益は年によって10倍も変動します。


これは単純に世界経済の上下でコンテナ運賃が大きく変動するからで、同じ航路で燃料等のコストも同額だったとしても、世界経済次第では、運賃が何倍も変わったりするのが当たり前だったりします。



商船三社の祖業であり、売上貢献度も大きいのですが、この波の激しさと、それのコントロールの難しさから三社は切り離して合併させることにして誕生したのがONEです。



コンテナ船はでかいほど稼げるのですが、波が激しすぎて、大型コンテナ船の製造となると投資額が1000億円規模にもなり、完成したタイミングで世界経済が低迷したら、下手すると会社全体の経営危機になるので、なかなか巨大コンテナ船を導入することができませんでした。



しかし、ONEになってからは日本のコンテナ船会社が一社になったからなのか業績は好調で、世界でも最大クラスのコンテナ船を導入しています。


どれくらいでかいかというと、400mとかあるので、全長は東海道新幹線の車両と同じくらい。


それなのに高さは70mもあるので、そこらのオフィスビルより高いです。


基本的には日本を介さない航路で運用されるのですが、日本でも立ち寄れる港が横浜の本牧くらいじゃないと無理です。




国内大手三社のコンテナ船事業が合併した巨大企業なのですが、世界シェアでみると大きくはありません。


頑張ったときでようやく7%くらいで、業界トップ3はスイス、デンマーク、フランスの海運会社です。


だいたいこれらがシェア10%を超えている勢で、この他にも台湾や中国の海運会社がいて、ようやく日本のONEが来ます。



面白いのがONE発足前は、日本企業が日本で輸出入するときは、日本の海運会社を優先的に利用していました。


しかしながら発足前頃から、コンテナ船に関しては日本企業が日本の海運会社にこだわらなくなってきたのです。


価格とサービスで比較するという当たり前のことをやりだしました。


コンテナ船のサービスに差異は殆どなく、日本語使えるスタッフもいるし、何なら日本の代理店経由もあるので、日本の海運会社に価格優位性がないと利用してもらえないということになります。 


その結果どうなったかというと、ONEはより稼げる、需要の多い航路に投資を行い、日本の輸出入航路は残るものの、台湾とかにシェアを奪われてでもいいやで楽に構えた結果、利益率が向上しました。


日本人向けに拘らないほうが利益率上がるというのは不思議ですね。


とはいえ、コロナ禍のコンテナ船不足のときには臨時便を日本発着に優先的に割り当てたりと日本企業らしさもあります。




こうして日本では珍しい大企業の不採算部門を分割合併して大成功した企業となりました。


分割合併して誕生した企業はジャパンディスプレイとか色々ありますが、結局は元の会社の流儀がぶつかりまくったり、親会社離れができていなかったりと、競争力をつけることができずに多くが苦戦しています。



こんな中成功したのは、この合併に政府関連が一切関知していないことや、親会社三社の顔色を伺う経営にならなかったこと等色々ありますが、タイミングも良かったと思います。


なぜなら創業当初のゴタゴタが落ち着いたときにコロナに突入したからです。



世間的にはコロナ禍は不況でしたが、物流業界はバブルでした。


特に海運は港が感染によって閉鎖や人手不足になって、船がいつどこに到着するかわからない、コンテナもいつ帰ってくるかわからないという状況となり、世界的に海運の物流が圧倒的に不足しました。


航空運賃で例えるならば夏休みや年末年始の繁忙期料金どころではなく、キャンセル待ちしかないのに、繁忙期より更に高い料金みたいな感じです。


そうじゃないと荷物を運べないというくらい荷主達はコンテナやコンテナ船不足に困窮したのです。



そこまで運賃が上がったでONEは莫大な利益を上げたのですが、じゃあそのコストが物価高に反映されたかというと、そもそも為替影響を除くと、ドライで運べる輸入品に関しては1%程度だそうです。


そんなに価格高騰したのに1%しか影響しないなんて安いなぁと思いましたが、これはあくまで船で運んだ価格。


他に港に置いておいたり、コンテナリース料だったり、陸路の運送コストがかかります。


そういう諸々を含めたらもっと影響ありそうですが、諸々はケースバイケースで実に多様みたいなので、全体を踏まえた物価への影響は計算不可みたいです。