日本で第四のMNOになるべく一新された楽天モバイルは、無料ユーザーを排除したものの業績は思わしくありません。




無料ユーザーは元々どんなものかお試しさせる目的だったでしょうから、廃止するのは当然でしょう。



ですが、問題はそこではありません。


準備をしないということは、失敗する準備をする、というような言葉があるように、完全に準備不足から始まっています。




モバイル通信業界は、NTT民営化に合わせて自由化しました。


最初に今のKDDI。

お次に日本テレコム→ボーダフォン→ソフトバンクと変遷して、3社体制となりました。



日本テレコムは元々は鉄道通信の会社なので、ある程度は通信設備を保有しており、初期投資は幾分抑えられていました。


そこへ外資系のボーダフォンが更に投資することで、ドコモやKDDIと遜色ない通信網が完成。


しかし、外資系という異色さをウリに転換し切れなくて撤退。


ソフトバンクは事業買収に巨額のお金がかかりましたが、設備や人員はそのまま引き継げましたから、投資という面ではかなり抑えることが出来ました。




KDDI(創業はKDD)は完全に真っさらからスタートなので、楽天モバイルと同じです。


最終的には京セラ創業者の稲盛さんが創業者となりますが、KDDIの設立にはかなり慎重に進められました。


日本では初の通信自由化というのもありますが、設備投資に莫大な金がかかったりとか、採算性が読めないとかですね。


まずKDDI創業者は誰にするかで、最終候補には京セラ創業者とソニー創業者の二択でした。


ソニーのお得意様がNTTだったので、京セラ創業者になりましたが、KDDIの出資者は壮大な顔ぶれです。


取締役にはNTT内の自由化賛成派技術者もいて、更には非常勤ですが、ソニー創業者、セコム創業者、ウシオ電機創業者が並びます。


出資企業はこれ以外にも三菱商事、リクルート、サントリー等、多数の今も一流企業が並びました。


これだけの人員と資金がありながらも、KDDIはまずはNTTの稼ぎ頭である東名阪に限定して設備投資をし、そこで運用ノウハウを得たりしてから、全国展開するという石橋を叩いて渡る慎重さを見せました。




時代が異なりはしますが、楽天モバイルは早期の全国カバーを目指しました。


これまでMVNOとしてやったきたノウハウは十分にありますが、MNOは全然違います。


初期段階のトラブルがあったり、KDDI回線を借りてカバーしたりもしましたが、KDDI回線だけになる人からしたら、楽天モバイルである理由は何もないんですよね。



また、KDDIは多くのNTT内にいる通信自由化賛成派を雇うことが出来ました。


おそらくNTT内では自由化賛成の声を上げにくかったのでしょう。



しかし、楽天モバイルは普通に引き抜くだけなので限定的です。


引き抜きコストもかかるので、メンテナンス系はスキルの高い技術者不足を招きました。



楽天は多額の資金を持っていて自己資金だけで頑張っています。


楽天モバイルは楽天の完全子会社です。



京セラやソニーも自己資金は十分にありましたが、それでも自社の成長投資と余裕資金を残すとしたら、共同出資という方針一択でした。


その為、KDDIが初期投資で最終利益がでなくても、出資企業、特に京セラの本業には影響がなかったのです。



楽天は楽天市場の豊富な品揃えが自慢の一つでありますが、多くの客を引きつけるのが、やはり高いポイント付与率です。


瞬間風速的なキャンペーンはPayPayやドコモに負けはしても、通年で使うにはポイント付与率が高かったです。


しかもグループサービスを使えば相乗効果でポイント付与が増えたりしていました。


しかしながら、楽天モバイルによる負担が重すぎるからと言われているように、どんどんポイント還元率が下がったり廃止になってきています。


利益率が高いからポイント還元率も高くしやすかった金融事業ですらポイント付与が減り、むしろ楽天にこだわらないなら、色んなポイントが貰えるライバルのSBIのほうがいいとなっていて、今年の3月にはSBI証券への国内株式移管の80%以上が楽天証券からという巨額の資産流出を招いてしまいます。


証券会社や銀行はよく口座数で自慢したりしますが、口座維持に金がかからないので、そうそう減りません。


大事なのはアクティブユーザーであり、つまり顧客の総資産残高です。


ソシャゲも無課金ユーザーが1億人いるゲームより、アクティブユーザー100万人でも10%が課金ユーザーのほうが成長する、長生きするゲームであるように、口座数でしか自慢できない金融機関は要注意です。




楽天の創業者は政財界にも顔が利くそうですが、楽天モバイルを開始するにあたって、出資者ないしは出資企業を募らなかったことから、顔見知りくらいなのかな。


ここら辺ではソフトバンク創業者とは経営者としてのレベルの差が見えるのかな。


あの人は顔広すぎるし、協業もガンガンやりますからね。



ボーダフォンでも6年は存続したので、2020年に正式スタートした楽天モバイルはまだまだどうなるか未知数です。


ただ、楽天銀行や楽天証券が上場すると、そっちの利益を楽天モバイルの赤字で相殺がやりにくくなります。

(上場で多額の資金調達は出来ますが)


そうなると、3社より安いだけでは万年赤字企業から脱出出来ませんが、楽天はこの重しを解消出来るのでしょうか。