「アイツのことが許せない！」と思ったら読む記事

心理カウンセラー・公認心理師の

栗林あや（いがぐりこ）です。

私たちの日常生活の中で、「アイツのことが許せない！」と感じる瞬間は、誰にでもありますよね。（私だけ？？(笑)）

交通渋滞に巻き込まれた時、大切な人に裏切られた時、仕事で思うようにいかない時、誰かに傷つけられたように感じた時。

そんな時、胸の奥から湧き上がる怒りを「くそーっ！！どうにかしたい！」と思うこともあるでしょう。（え・・・私だけ？？(笑)）

そんな時、心の世界では一般的に「深呼吸して落ち着こう」とか「感謝の気持ちを思い出そう」とかのアドバイスがなされます。

「アンガーマネジメント」といって、文字通り「怒りをコントロールする方法」のアドバイスですね。

でも今回は、怒りという感情に、ちょっと違った角度から向き合う方法を紹介しようと思います。

「怒り」って、一見すると「ネガティブな感情」と捉えがちですが、実は私たちに「大切なメッセージ」を伝えていることがあります。

それは「あなたの価値観はこれだよ」というメッセージです。

誰もが生きる上で「価値観」を持っています。

「これは良いこと」
「これはダメなこと」

「これは喜ばしいこと」
「これは許されないこと」

このように価値観は、目の前の出来事の善悪を判断する時の、「基準となる考え方」のことです。

この価値観は、多くの場合、親や影響力のある人から教えられたり、環境や経験の中で生まれ、インストールされます。

大人になった今、どんな価値観を持って生きているかは、人それぞれです。

あの人がどんな価値観を持って生きているか、私にはわからないし、
自分がどんな価値観をもっているかも、自分でも気づかないことがよくあります。

そんな時、「怒り」の感情が役に立つのです。

たとえば、友達が約束を破ったとき、心の中で怒りが湧いてくるのは、

自分が大切にしている「信頼」という価値観が脅かされたサインかもしれません。

また、仕事でミスをしてしまって、上司から叱られた時のイライラは、

「年長者の期待に応えなければならない」という価値観や、「自分を大切にしてほしい」という心の声が聞こえてきたのかもしれません。

つまり、怒りを感じたら、それは自分の心が「何か」を伝えようとしている合図なのです。

もしかしたら、あなたの内面にある大切な価値観やニーズが「満たされていない」という信号を送っているのかもしれませんね。

では、どうしたらいいか。

まず、怒りを感じた時に、その怒りをただ押し込めるのではなく、

一つの「メッセージ」として捉えてみると良いです。

自分の心が今、何を訴えているのか。

どんなことで傷ついているのか。

ゆっくりと時間をかけて考えてみる。

自分の中で何が起こっているのか。

どのような価値観が脅かされていて、

どのようなニーズが満たされていないのかを、静かに探ってみるのです。

この時間を通じて、自分自身をもっと理解することができます。

例えば、怒りの原因をじっくり探ることで、自分がどのような時に感謝の気持ちを忘れがちになるのか。

また、どんな状況で、自分の大切な価値観が揺らぎやすいのかが、見えてくるかもしれません。

そこから、どうしたら心を落ち着けられるか、どうしたらもっと幸せになれるかのヒントが見つかります。

これは、単に怒りを抑えるだけでなく、人間関係をより良くするための、また、自分を成長させるための一歩となります。

先ほどの例だと、「信頼」が脅かされたと感じた時は、その人との関係を見直す良い機会かもしれません。

自己評価が下がった時は、それを取り戻すための、新しい勉強に挑戦するきっかけになるかもしれません。

冒頭の「交通渋滞」の例だとわかりやすいですね。

次に出かけるときは、ルートを変えたり、早めに家を出れば、案外あっさりと解決するかもしれません。

つまり「時間＝心のゆとり」が自分には大切なのだ、とわかります。

こうしてみると、怒りと向き合うことは、自分自身との対話を深める方法とも言えます。

この考え方を日々の生活に取り入れてみると、怒りを感じた時にただ反応するのではなく、

反応しちゃってもいいけど、ちょっと落ち着いたら、その感情から何かを学んで、「自分を成長させる機会」に変えることもできます。

「怒り」という感情を、自分自身の成長のためのツールとして使うことができるのです。

「アイツのことが許せない！」と思ったとき、その渦中にいるときはワナワナしちゃうのは仕方ない。

でもちょっと落ち着いたら、そのエネルギーを「自分自身の成長のためのツール」として使うと、落ち着くことがありますよ。