お父さんのこと。

他の、もっと楽しくてキラキラした世界を見て
どこかにいっちゃう気がした。


おかあさんのヒステリーがだめで、
もっとああしてよこうしてよ言うのがだめで、
不平や不満をいうのがだめで。




そしてなにより、


私がもっと
甘え上手なこどもだったら、
お父さんは外に行かなかったんじゃないか。


わたしは
かわいげのないこどもだから。


うまく、わらえないから。

すなおに、あまえられないから。



こどもらしくないこどもで、

おもくて、

めんどうくさくて、

わかがままで。

うっとおしくて、

陰気くさいお荷物で。



何考えてるかよくわからなくて、

ぜんぜんしゃべらない

あいさつもろくにできない

ひっこみじあんな

かわいくないこ。



へんなこ。

困ったわね。

 

 

 

 


わたしがかわいくなかったから。

こどもらしいこじゃなかったから。

すなおじゃなかったから。

あまえじょうずじゃなかったから。




だから、

もっとキラキラした

外の世界にいっちゃったんじゃないか。



もっと、
わらっていればよかったのに。



もっと、笑えよ。

楽しそうにしろよ。

こどもらしく、甘えろよ。


なにだまってんだよ。

だまって突っ立って、きもちわるい。



だまっていたら、
なにもわからないのよ!

なんとかいいなさいよ!

どうおもってるのか、いいなさいよ!

ねえ、なにかんがえてるの!

他のこと考えてるんじゃないでしょうね!


気味の悪い子!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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なぜ、ふあんになるの?

なぜ、こわくなるの?



すなおに、

おとうさんだいすきって
とびこめばいいのに。



そこにとびこんだら、

おいていかれたとき、

もっと、もっと、さびしくなるから。




「こわいから、わたしのそばにいて」



おとうさんのことは、すきになってはいけなかった。

おとうさんのことを、信じてはいけなかった。



それは、

まぎれもなく、

おかあさんへのやさしさと、

おかあさんを信じていた、わたしのきもち。



相手の本心を知る前から

警戒しちゃうのも、

恐怖を感じるのも、

悪い方に妄想するのも、


だいじな、わたし。



きずつくことから、

たくさんきずついてきたことから、

わたしをまもってくれていた、わたし。




だから、

そこにいて。

こわいから、そばにいて。




わたしを見てって
いわなくても済むような状況で、

わたしをみていてほしかった。


わるいことして、
めをひくことも、できなかった。


助けて、は、
もっといえなかった。




恐怖がふくらみ、

警戒心が増し、



ヘルメットを準備するのも、

夜逃げのしたくするのも、

赤いジャンパーを枕元におくのも、

たからもののシールをまとめるのも、


そんな、

だいじなわたしだった。



「こわいから、わたしのそばにいて」


あの時、やくそくしたのは、
わたしだった。



いまでも、まだずっと。

おぼえてくれていた。




わたしのなかの、

警戒心と恐怖心を持ち合わせた
準備万端なわたしは、



大人になったいまでは、


何かの用意したり

事務やったり、

旅じたくしたり、


こんなときに、

このわたしが大かつやくする。



赤いジャンパーが、
赤いスーツケースに変わった。



どうか、わたしのなかの、

恐怖を感じているわたしよ、

これからも、
わたしに、ちからをかしてください。



わたしが、

じゅんびばんたんに

あんしんして

いろんなことができるよう、

光の方向に

ちからをかしてください。



あの時のやくそくを、
いまでも、

ありがとう。



そんな準備万端のわたしが

たまに、

へたこいて

かんじんなとこで

しっぱいすることもある。



そんなときは、

「そんなにふあんにならなくてもいいよー」

「だいじょうぶだよーーー」

「なんとかなるさーーー」



そう、

思い始めたときなのかもしれない。




おとうさん、

わたしはおとうさんがだいすきでした。



そのきもちすら、

つたえられなかったけど。ね。



こわいから、

あのときのわたし、

ずっと、ずっと、わたしのそばにいてください。

 

 

 

 

 

 

 

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