つい2か月前まで。

 

おばあさん(旦那の祖母)の、愚痴を聞くのが嫌だった。

 

 

内容は、主に姑(旦那の母)への愚痴。

 

 

「おかあさん(姑)は、出掛けてばかり。」

 

「家が汚い。」

「畑をやっても、ろくなもの作れない。」

「無駄なものばかり買ってくる。」

「畑で出来た野菜も、使いきれずに腐る。」

 

 

私は、まるで自分のことを責められているようで、

 

 

とても怖かった。

 

 

おばあさんに文句を言われないように。

 

 

せっせと部屋を掃除する。

姑が育てた野菜は、痛む前に使いきる。

使いきれるように、メニューを必死で考える。

 

たいしたことない用事で、出かけるのは、ダメな嫁なんだ。

 

出掛けてはいけない。

主婦は無駄なものを買ってはいけない。

 

 

おばあさんの愚痴を聞いて、

 

 

そんな風に、どんどん自分を追い詰めていった。

 

妄想に責められる。

 

「おまえは自由にしてはいけない」


「贅沢する嫁なんか、いらない」

 

 

 

もう、どうにもならなくなって、
すがる思いで、ここ2カ月間。

 

 

 

せっせせっせと、

本気で、信じたことがある。


それが、「ああ、そうですか。」

 

 

 

おばあさんの愚痴に、

 

 

 

「ああ、そうですか」を続けた。

 

 

教えてもらった通り、

 

 

「ああ、そうですか。」

何を言われても、

「ああ、そうですか。」

 

 

うるせー!くそばばぁ!私を掃き溜めにするなー!!

 

 

そう思う自分にも、「ああ、そうですか。」

 

ああ、怖いよー。

 

私の事を、悪く言ってるんだろ?嫌味か!!

そう思う自分にも、「ああ、そうですか。」

 

 

 

 

そしたら今日。
心境に変化が起こった。

 

 

 

 

 

 

おばあさん、いつもの通り、愚痴を言う。

 

 

 

「おかあさん(姑)また、実家の畑に行ってるのか。

 

余計なものばかり作って、また腐らかす。

年金も、無駄なもの買ってばかり。しょうもない人だ。」

 

 

そこから、おばあさんが姑時代だった頃の話し。

 

 

いつものパターン。

 

 

旦那がまだ幼稚園児だったころ。

 

 

 

姑は学校の先生で、働いていたので、

 

おばあさんは、旦那・旦那の妹・旦那の弟。

 

3人の孫たちの世話をしながら、

 

家事をやった。

 

 

当時、このあたりには工場がいくつもあって

 

 

働き口がたくさんあって、

 

おばあさんも近所の工場で働いていた。

 

 

でも、孫の世話をするために、仕事を辞めた。

 

 

姑が、学校の先生をやめて、子育てに専念すれば良かったけど、

 

学校の先生の方が、おばあさんが工場で働くより、

稼ぎが良いから、

おばあさんが、工場をやめた。

 

やめた後は、3人の孫を見ながら、家事を完璧にこなした。

 

 

 

 

いつもの、おばあさんのサクセス?ストーリー。

 

 

 

 

この2ヶ月間「ああ、そうですか。」と、聞き流していた、サクセスストーリー。

 

 

「また、始まったか。」

 

「どうせ、自分の家事が完璧だったって事、自慢したいんでしょ?」

「私にも、子供見ながら、完璧に家事をしろって、事なんでしょう?」

 

そう思って、聞いていた。

 

 

 

 

けど、今日は、違った。

今日、聞いてて、初めて気づいた。

 

 

もしかして…

 

 

 

おばあさん、家事が完璧なの自慢をしたいんじゃなくって、

 

私の家事の嫌味を言いたいのではなくて、


それもあるかもしれないけもど、

 

それよりも、

 

 

もしかして…。
 

 

 

昔、自分が仕事を辞めてまで、

 

姑の稼ぎを優先させてあげたこと。

 

姑の稼ぎを優先したことは、

 

家を存続させるために必要だったこと。

 

自分が仕事をやめてまで、家を大切にして、孫を育ててきたこと。

 

 

自分の事よりも、家族に一身をささげて尽くしてきたこと。

 

 

 

わかって欲しかったんだ。

 

 

 

誰かに、聞いて欲しかったんだ。

 

 

 

「あんたたちのために、私、仕事辞めたんだからね!」は、

 

 

「でも、そのくらい、家族が大切で、当時は必死だったのよ。」

 

そう言いたい。

 

でも、そんなこと、当時一緒に暮らしていた、家族には言えない。

 

 

もしかして、

 

 

私だから、話してくれたのかな??

 

私だから、心を許してくれたのかな??

 

 

 

今日、やっと気付いた。

 

 

 

 

そんな気持ちで

 

 

今日は愚痴を「聴けた。」

 

 

約2カ月ぶり。

 

 

おばあさんの愚痴に、

「ああ、そうですか」以外の言葉を使うのは。

 

 

 

おばあさんが、守ってきた家だから、大事にしたいよね。

 

 

 

おかあさん(姑)が今、年金生活しているのは、

当時、おばあさんが子供たちを見ていてくれたおかげなんだね。

 

だから、お金も家も大切にしたいね。

 

 

 

…そんなことを、私、言ったと思う。

 

 

 

 

そしたら、おばあさんが、目を潤ませたので、びっくりした。

 

 



聞くと、この家は、
旦那の亡くなった祖父が、戦争中に満州へ出向いたときの、

恩給と、遺族者年金で、建てたものらしい。

 

 

その話は、おばあさんから今までも、何度も聞いたので、知っていた。

 

 

 

「なのに、おかあさんには、家を建て替えるだけの能力が無い」と

 

姑への愚痴と、いつもセットだったので、

私は「ふーん。自分たちは家を建てる甲斐性があるって自慢かな?」程度に思った。
 

今日は、すなおに聴けた。

 

「そうか。おじいさんが、命をかけて、稼いだお金で建てた家なんだね。

 

私も大事にするよ。」

 

私はそういった。

 

 

そしたら、おばあさんの潤んだ目から、涙がこぼれた。

 


すごく、びっくりした。

目頭から、しわくちゃの、鼻に、
涙が伝った。

びっくりして、恐くなったので、
私は目をそらして、うつむいた。

 

 

 

 

くそばばぁが、泣いた。


嫌味ばっかり言う、くそばばぁが、泣いた。

 

 

 

 

すごく、驚いた。

 


ああ、驚いた。