概念フレームワークでは、財務諸表における全般的考慮事項を以下の通り定義しています。
(1)適正表示とIFRSへの準拠
財務諸表は、企業の財政状態、経営成績およびキャッシュフローを適正に表示するものでなければなりません。なお、財務諸表がIFRSに準拠して作成されたものと認識されるためには、IFRSのすべての規定に準拠していることが必要であり、かつその旨を注記に明示しなければなりません。
但し、IFRSの規定に従うと財務諸表の利用者をミスリードすることになり、フレームワークにおける財務諸表の目的に反してしまうことになると経営者が結論づけるような場合については、IFRSの規定以外の方法で会計処理することになります。しかし、このようなケースはきわめて稀であると想定され、詳細な開示が要求されます。
(2)継続企業の前提
財務諸表は継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)にもとづいて作成されるため、経営者は財務諸表の作成に際して、まずこの前提に係る評価を行うことが必要です。継続企業の前提の評価に際して重要な不確実性が存在する場合には、その旨の開示が必要となります。また、財務諸表が継続企業の前提にもとづいて作成されていない場合には、その旨と財務諸表作成の基礎となる前提、継続企業に該当しない理由の開示が必要となります。
(3)発生主義
財務諸表は、キャッシュフロー計算書を除き、発生主義により作成しなければなりません。つまり、資金収支の時点で計上してはいけないということです。
(4)重要性と合算
原則として、重要な項目は区分表示し、重要性に乏しい項目は集約して表示する必要があります。また、性質や機能の異なる項目については、それが重要性に乏しいと判断できる場合を除き、区分表示する必要があります。IFRSは原則主義のため、詳細な数値基準が存在しません。各企業において、重要性の判断基準を明確に定め、区分表示か集約表示かを判断することになります。
(5)相殺
資産と負債、および収益と費用は、IFRSの規定により強制されているか認められている場合を除き、相殺して表示することはできません。これらを相殺することにより、財務諸表の利用者が取引や事象等を正確に判断することが困難となり、結果的にミスリードする恐れがあるからです。
(6)報告の頻度
1組の財務諸表(およびその比較情報)を最低年1回作成することが義務づけられています。期中報告の頻度に関する規定は特に設けられておらず、またその作成義務に関する規定もありません。IFRSは、期中報告の作成と頻度に関しては、各国の法規制や証券取引所の規則に従うとする立場を採用しています。なお、IFRSにて期中報告を作成する際には、IAS第34号「期中財務報告」の規定に従う必要があります。
現状、日本では金融商品取引法により四半期財務諸表を公表することが義務付けられています。この背景を鑑みれば、IFRS適用後においてもIFRSベースでの四半期報告は実施されることになり、その際には当該四半期財務諸表にIAS第34号を適用することになることが想定されます。
(7)表示の継続性
財務諸表項目の表示および分類方法は、企業の事業内容の重要な変更や財務諸表の表示・分類方法の見直しの結果、他の表示・分類方法を採用するほうがより適切であることが明らかな場合や基準書または解釈指針により表示の変更が強制されるケースを除き、継続して適用する必要があります。
トモ