ALFRED CORTOT / LISZT:SONATA IN B MINOR | いえのレコードを聴きなおす

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音楽やオーディオなどです。ステージ4の癌になりました。

リストのソナタロ短調の世界初録音は1929年のコルトーのこれです。まさかのコルトー。彼にはリストを弾くイメージはありませんからね。しかもコルトーは決して技術的に優れているわけではない。コルトーの芸術というのはそんな価値観ではないので、そもそも彼がリストを弾く必要があるのか?...と最初にLPの復刻でこの演奏を聴いた時には思いました。変な演奏だな~、みたいな。

 

でも、何度か聴いているうちに、上手くはないけど美しいということが理解できるようになり、これはこれでついつい聴いてしまう演奏だな、と。コルトーの全てはポエジーだと思いますので、この曲の構造がどうだとか、そんなことではなく、刹那的なポエジーの最大限の発露を全身で受け止めることができたら、もうそれでコルトーを聴いた価値があるのです。こんなピアニストって後にも先にもコルトーしかいない気がします。そういう意味では、彼がこの曲を弾こうと思ったのが理解できます。

 

それをSPで聴くと実演を聴いてるようなリアリティがあるんですね。LP復刻のフワフワした音、あれ何だったんだ。

 

この曲には3年後の1932年のホロヴィッツの録音があります。同じHMVで、D.B.1855から始まるセットです。盛大なミスタッチもありますが、指回りの良さはさすがで、技術的には当時の頂点にいた演奏家であることは十分に伝わります。が、個人的にはあまり魅力を感じない。もちろん、買える値段でオリジナルのSPが売ってたら、絶対に買ってしまうんです。それはまた別の問題。でも、演奏としては下手くそなコルトーの方がはるかに魅力的です。まあ、色々と理屈をこねずに一言でいうと、ホロヴィッツのような演奏なら、「だったらポリーニかツィンマーマンでも聴くわ」ってなるわけで、コルトーのような演奏は他にないので、これでしか聴けないからかな。癖になりますね。

 

願わくば、SPの再生環境のない人でも、本来の音で聴けるようになって欲しいと思います。旧EMI系のものは特にそう。こんなのって、大昔にだれかが盤から起こしたやつがマスターテープになってるだけで、それを何度もリマスターしてるんでしょ、って思ってる。とは言え、CD買ってないから、言える資格はありません...。