「おう、今けえった。」
「おかえり。遅かったじゃないかね。」
「いや、留公ンとこに寄ったらよ。野郎芋なんか食ってやがって。」
「うん、うん。」
「どうしただってったら、金がねぇから米が買えねぇってんだよ。
江戸っ子がんなみっともねぇことすンなってんで叱ってけえってきたんだよ。」
「うん、うん。」
「おめぇ、ひとっ走り留ンとこに米届けてやんな。」
「ただいま。」
「おう、どうだったぃ?」
「留さん、ありがたいありがたって泣いて喜んでたよ。」
「そうかぁ。良かった良かった。安心したら腹減っちまった。こっちも飯にするか。」
「なに云ってんだよ。留さんとこに持ってっちゃったから、
うちに米なんかありゃしないじゃないか。」
「あぁ、そうかあ!んじゃ芋煮て食うか。」