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中村文則さんの「遮光」を読んだ。


中村文則さんの作品は、最近のものから読みはじめた口なので、
初期のこの作品には、非常に驚いた。

本棚に買い置きしてあった小説の中から、
何の気なしに手に取って読みはじめたけど。

タクシーに乗り込んで、いきなり、「子供が生まれそうなのです。」と、
嘘をつく冒頭からはじまる展開に、正直、しまった!と思った。

陰鬱さよりも、周囲から得られる幸福を選んだ、虚言癖の青年の物語。

途中、何度も、何度も、読むのを止めよう、と思ったけど、
中盤になると、なんかもう、どうにでもなれ!好きなようにしてくれ!って、
半狂乱というか、自暴自棄みたいになって、最後のページまで読み進めた訳なんだけど。


この小説に、

「私は自分の中に陶酔を感じ、同時に、怒りが込み上げてた。
そして、妙なことだが、その怒りは私にとって、限りなく心地好いものだった。
私はその沸き上がる怒りの中で、陶酔しながら、我を忘れた。」

って、文があるんだけど、読みながら、泣いた。

もしかしたら、私もこの物語の青年になっていたかもしれない、と思うと、怖くて泣けたのと、
荒んでいた時期にそばにいてくれた人がいてよかったなぁ、って。

この小説は、私の人生だったかもしれない。

でも、読んであの頃の自分と向き合えてよかった。

きっと、作品に描かれている青年までは行かなくとも、
そういう人って多いはずだよ。

とくに、今、繋がるのが簡単な世界だから。

その分、寂しくて、振り向いて欲しくなるんだよね、きっと。



だから、私は歌おうと思う。

もっと叫ぼうと思う。

もっと、理不尽な世界に向けて、歌おうと思う。