![{85442301-CB54-4CEB-AF89-856FC7E19A82:01}](https://stat.ameba.jp/user_images/20140611/20/ieirileo/6c/78/j/o0480048012970098157.jpg?caw=800)
中村文則さんの「遮光」を読んだ。
中村文則さんの作品は、最近のものから読みはじめた口なので、
初期のこの作品には、非常に驚いた。
本棚に買い置きしてあった小説の中から、
何の気なしに手に取って読みはじめたけど。
タクシーに乗り込んで、いきなり、「子供が生まれそうなのです。」と、
嘘をつく冒頭からはじまる展開に、正直、しまった!と思った。
陰鬱さよりも、周囲から得られる幸福を選んだ、虚言癖の青年の物語。
途中、何度も、何度も、読むのを止めよう、と思ったけど、
中盤になると、なんかもう、どうにでもなれ!好きなようにしてくれ!って、
半狂乱というか、自暴自棄みたいになって、最後のページまで読み進めた訳なんだけど。
この小説に、
「私は自分の中に陶酔を感じ、同時に、怒りが込み上げてた。
そして、妙なことだが、その怒りは私にとって、限りなく心地好いものだった。
私はその沸き上がる怒りの中で、陶酔しながら、我を忘れた。」
って、文があるんだけど、読みながら、泣いた。
もしかしたら、私もこの物語の青年になっていたかもしれない、と思うと、怖くて泣けたのと、
荒んでいた時期にそばにいてくれた人がいてよかったなぁ、って。
この小説は、私の人生だったかもしれない。
でも、読んであの頃の自分と向き合えてよかった。
きっと、作品に描かれている青年までは行かなくとも、
そういう人って多いはずだよ。
とくに、今、繋がるのが簡単な世界だから。
その分、寂しくて、振り向いて欲しくなるんだよね、きっと。
だから、私は歌おうと思う。
もっと叫ぼうと思う。
もっと、理不尽な世界に向けて、歌おうと思う。