冬の風たちが、無邪気に笑いながら私の髪をすりぬけて行く時。

愛しさと、切なさと、寂しさと、懐かしさが体を駆け抜ける。


一瞬の間に多くを感じ過ぎて、目をつぶる。

そしたら、君に言った言葉を思い出す。


あの日、バスを待つベンチは風が強く寒くて、

すぐ来るはずのバスも遅れていた。


いつもなら、弾む会話も途絶えがちで

なんとなく、きまずかった。


そんな時、強い風がふいた。


君のマフラーと形のいいセーラー服の赤のリボンが

おおきく揺れて、くずれた。

君が泣きそうな顔をするから、咄嗟に言った。


息が白く残るようになったら、冬になったら、

仕返ししてあげる、って。


きょとんとする君に続けた。


悪戯な冬の風は、普段は姿が見えない。


でも、息が白く残るようになれば、風が悪戯をしたら、

空中にはぁーって息をはいて、行く先を追えばいい。


どこに逃げようとしているのか分かるから。

そしたら、私が怒ってあげる!って。

そしたら、君は笑ってくれた。


つられて、私も笑った。