いんちき古民家再生工務店が嫌いなんです。 | 曳家岡本のブログ

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東日本大地震以降、ご招聘いただきましたら全国で曳家・家の傾き(沈下修正工事)、家起こしなどをさせていただいている曳家職人・岡本直也の現場と時々(笑)子どもの悩みを書いているブログです。

昨日は香川県高松市での「構造塾」第一回セミナーを受講して来ました。

このセミナーは建築士さん向けのものなんですが、自分のように家を持ち揚げたり、動かす曳家にとっても有益な情報が得られますので、頑張って参加しております。

 

昨日の話の中では床組みを強化することで、(水平構面を高める。と云うそうです)家がより強い箱化することを学びました。

今は多くの新築で24ミリの構造用合板が使われることで強度を確保しています。

ちょ・・・ちょっと待った!!!

この仕様だと、いわゆる「根太レス」になるのですが・・新築時なら安価で充分な性能を持ちますが。

将来、万が一、地震や白蟻被害など様々な理由から、柱や土台を入れ換えなくてはならなくなった時に、「根太レス」では、かなり大きな修復工事費が必要になります。

 

日本が高度成長に向かう前の昭和30年代生まれとしては、「あのメーカーの工具が、壊れた時に直せんき。いかんぞ」と育てられていますから。将来のリフォーム時のことを考慮していないような「高性能住宅?」に対して疑問を持ってしまいます。

 

そういう意味では、伝統構法の家は、将来の増改築に対して柔軟性は優れています。

実際、どんなに素晴らしいモデルハウスを見て、それをそっくりそのまま建てたとしても、実際の家族構成や生活様式は、それぞれの家庭で微妙に違うものです。ましてや娘は巣立ち、両親も亡くなるのが運命です。

ほとんどの方にとって家は人生最大の買い物ですし、もっとも長く過ごす場所ですから、安心安全かつ「できるだけ」ストレスが、少ない造りであるべきです。

これは、歳とって、じわじわと判ってきたことです(苦笑)

 

「構造塾」セミナーの中で、例え話として、家を車に置き換えて解説してくださる場面が多々あります。

自分がよく躯体修復を担当させていただく、古民家だとクラッシックカーもしくはアンティークです。

決してプリウスのような高性能はありません。

 

ですが・・自分は自分が携わらせていただく古民家再生に於いて、意見を求めていただける場合は、金物も含めて、新しい資材で良いと思うものはどんどん提案させていただいています。

これはクラッシックカーの意匠ですが、中身は現代のパーツにチューンナップしているように考えてもらえば判り易いと思います。

かつては存在しなかったケミカルアンカーや、炭素繊維、もしくはアラミドによる木部補修まで勉強して、最短距離でオリジナルを尊敬しつつ、現代の建築基準に取り換えてゆくことを、先にその建物に携わった職人さんたちも笑って赦してくださると思います。

 

批判すべきは・・古民家をただの意匠として捉えながらも、それを隠して「先人の知恵」のように意味の無いオリジナル志向を喧伝する商売人たちです。

 

ちょっと話が逸れますが・・にわか古民家再生工務店の中に、古民家の性能を400年前から優美に遺されているお寺を例に話す方たちがいます。

おい・・おい・・おい!!(←oiパンクバンドじゃないです(笑))

お寺の柱や土台は20cmから30cmの角材が使われていて、しかもお寺によっては欅や栗、樫など硬い木を使っています。

普通の古民家は12cm角の杉か檜です。

普通に考えて、大きくて硬い木は折れにくいし、硬い木には白蟻も入り辛いです。

そんなわけで断面欠損率も全く違う数字になります。

そして、ほとんどのお寺は50年に1度、檀家さんたちからの寄付を募って改修を続けています。

そんなわけで古民家とお寺を同一の性能があるかのように話す方は詐欺師ですから気をつけた方が良いです。

 

昨夜の緩い懇親会(佐藤 実先生抜き)では、香川県と徳島県の建築士さんと、セミナーの延長戦のような話を続けました。

そこでは、自分は佐藤先生と違って、現場サイドの「ブラック構造塾」で、皆さんを凍りつかせました(苦笑)

 

香川県での世話人の一人、(株)アットホームの魚谷さんが「リフォームの際に優先されるのは耐震化よりもシステムキッチンやトイレの取り換えなんですよね」とは、現実はその通りだと思います。

それでも自分は自分に託していただいたお家が、ただの骨董品で無く、活用されて大丈夫な建物にするためのお手伝いをさせていただきたいと心から願っております。

 

どうぞ皆さま「曳家岡本」をよろしく御願いします!!

最近、新規問い合わせが無くて弱気になっております(汗)