歪んだ家を直す技術 | 曳家岡本のブログ

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東日本大地震以降、ご招聘いただきましたら全国で曳家・家の傾き(沈下修正工事)、家起こしなどをさせていただいている曳家職人・岡本直也の現場と時々(笑)子どもの悩みを書いているブログです。

久しぶりの本格的な、家の傾き(沈下修正工事)を高知市でやってます。

 

床下を、みみずのように這いながら、基礎レベルをレーザーポインターで計ります。

 

そして、ジャッキを掛ける位置を決めて、ジャッキ穴を斫ります。

そして・・ジャッキを掛けてゆきます。

ジャッキ穴を小さくするために、基礎をまたぐように厚い鉄板を通してゆき、内外にジャッキを設置します。

このジャッキを掛けるポイントの選び方で、きれいに揚がる、傷めてしまうわけですから、ポイント選びは親方の采配で決めてゆきます。

 

東日本大震災直後、にわか業者が「弊社では風窓を利用して、出来るだけ基礎を傷めずに持ち揚げています」とPRしておりましたが・・

風窓=荷重を享けていないから開口されているわけですから、そんなところにジャッキを掛けて押し揚げると・・本当に馬鹿って嫌ですよね。

 

風呂場にも、低床型ジャッキを惜しみなく使います(笑)

風呂場だけで5台使ってます。

こういう特殊な工具はすごく高価です。

でもねえ。プロですから、良い道具を持ってて当り前です。

 

風呂場とトイレの床が高基礎と通常の高さとのつなぎ目でしたので・・うまく揚がらず、トイレ側のタイルに切り込みを入れています。

さて・・ここからが本日のブログのメインです。

建築関係者なら「ほぅ~~」て感じですが、一般の方は判りつらいと思いと思います。

このレーザーポインターの赤い線を見て、向かって右方向が沈下しているものだと推測される方も多いと思います。

 

ところが・・これ・・実は左側に10mm程度傾いているだけなんです。

 

このベランダは外側はリフォームしているそうなんですが・・コンクリートが打たれていて、かなりの重さなのです。

よく見ていただくと、左上のベランダが前に垂れているのが判ります。

加えて、本来、2階が乗っている部分は、中央に赤く見えているジャッキの掛かっている基礎よりも、左側と同じく60cmほど奥に、2階の本体は来ているにも関わらず、その部分に柱も壁もありません。

 

要するに、左側の茶色の壁から、ドア近くまでの次の壁まで、全く筋交いも壁も無いのです。

これらが奥に向かって傾いている+ベランダが重い+壁も筋交いも無いという条件が重なって、家を歪ませてしまっているのです。

 

直下率の悪いことと壁の配置バランスが悪いわけで、4号特例ゆえの悲劇です。

 

さて、家を1階部分の柱だけ、垂直に直せるのか?

 

直せます!

画面、左上のように、枕木を梁まで組み上げて、その上でジャッキを斜めに掛けて、梁を突いて、枕木の上をすべらすような感じで2階のみを動かすことが出来ます。

 

ですが・・この場合、私どもの作業手間(今回の場合だと2間分で、約70万円くらい)

と、壁の撤去、復元費用が発生しますので、現実には、柱に三角形にカットした木材を左右に貼りつけて形状を整えて、更に壁の中に耐力壁を入れることで処理することが多いです。

 

でも・・曳家はこんなことも出来ますよ~ということを知っておいてください!