数年前、塩原温泉からの帰路、五十里(いかり)湖に立ち寄りました。

湖はときおりさざなみが立つだけの静けさをひろげ、緑色に湛える湖水が不気味さをかもし出していました。

友人と私は湖畔の茶店(ちゃみせ)に立ち寄り、湖面を観ながら、山菜定食を食します。

山菜は一度塩漬けにしてから煮込むらしく、見た目より濃い味がしました。

だしがよく染みて、さくさくと歯ざわりがよいから、ご飯がすすみます。

そんな五十里(ダム)御江戸日本橋より50里のところにあるから、そう名付けられたと友人が解説してくれました。

昔、湖の傍らの山の中腹に、大名の一行が休憩をとる陣地があったそうです。

以前はそこが観光地になっていたらしいのですが、経営に失敗して、今は廃墟になっているそうです。残念ですね。

それにしても湖は、人工とはいえ、ごく自然な景観をみせていました。

せんだての休日に再び訪れたら、あんなに客がいた茶店が、クローズされていました。

なおさら湖は、静かに不気味に横たわっていました。



靄の湖(うみ)鵠(くぐひ)は眠るごとゆきぬ をさむ

Lake of the haze,
The swan goes to sleep.       OSAMU