湯の沢静けさに 人声欲(ほ)りて屋戸(やど)を出(い)で 湯沢をめざし明けそむる 山路をゆきたり道すでに 冬色(いろ)をして残り葉の ときをり散れるしばし来て 火照る頬にひんやりと 風の過ぎたるやうやくに 湯煙見えて歩を速め 人が声する 梢(うれ)を分けたり人恋しければ落葉を被り来ぬながつりばしの下の湯の沢 をさむ