お早うございます。

寒い朝です。

皆さん風邪をひかぬよう、あたたかい服装でお出かけください。

さて、昭和の昔、かの黒澤明監督が、三船敏郎演じるところの、武将が木陰に寝転ぶシーンを撮りました。

映画では、武将の顔面を梢の影が涼しげに揺れていまが、事実のままに撮ると、影がぼやけてしまって、爽やかな風の動きを表現できません。

そこで、(葉の付いた)小枝を顔の間近にかざし、はっきりとした影を作って、撮影したのです。

歌人俵万智のかのサラダ記念日の歌は、から揚げをサラダに替えて詠んだといいます。

から揚げという脂っこい、重いものによって、フレッシュな恋を表現することが、むずかしかったのでしょう。

俳聖・老・翁などとも呼ばれる松尾芭蕉は、縦にのびる天の川を横に寝かせて、「荒海や佐渡に横たふ天の川」と、荒々しくも美しい佐渡海峡の夜景を表現しました。

芸術のリアルとは、本質をさすものです。

本質を表現するために、背景を差し替えることもあるのです。

私もつたない回顧録を書くのに、時折そんなリアルを意識します。

さらに、作文に未熟なゆえに、作品を最後まで読んでもらうのに、事実の繰り返しや深みの無い長文によって、臨場感を薄れさせて、読者を退屈にさせないように、注意をはらいます。

たとえば、ある二度のショーの描写を、短く、一度にまとめて表現しました。

それにしても、事実を「芸術的」に描写する能力は、私にとって、未だ遥か彼方のものです。




老碑掃(らうひそう)抜くには惜しき草紅葉     (をさむ)