我が家の裏手の御宅の庭に、大きな柿の木があります。

甘柿、渋柿のどちらかは知りませんが、枝もたわわに実が生っています。

そんな大量の柿を見ると、あることを思い出します。

少時、父が何処からか、大きな袋に一杯の、渋柿を貰ってきました。そしてそれらを樽に入れ、焼酎をかけて、蓋をしました。

幾日か過ぎると、なんとその渋柿が甘柿へと変化したのです。

さあ、大好きな柿が沢山食べられます。当時の日本経済は復興半ば、とても贅沢なことです。

数日かけて食べ尽くしましたが、けして飽きなかった。

今でも柿は好きな食べ物のひとつです。
先月、箱ごと買って、毎食後に食べて、一週間ほどでたいらげました。

ところで、美味しい柿は渋柿の類にあるといわれます。それならば、これまで食べた柿のほとんどは、あの樽に入れた柿と同様に、元は渋柿だったのかもしれません。

幼き日の化学的事件を懐かしんでいたら、無性に柿が食べたくなってしまった、私なのでした。




晴れ渡る古都のみ空に手を挿して柿の実もげば鐘の鳴りける     (をさむ)