私が尺八に出会ったのは、ある管楽器修理所。

修理所の職人さんにテナーサックスの修理の見積りをしてもらっている間、販売室のウインドを覗いていたら、木製の尺八が目に飛び込んできました。

これでジャズをやったらオーディエンスが喜ぶだろうと思いました。

値のはるものでもなかったので、軽い気持ちで、教則本とともに購入しました。

さて、暫く練習して、ある思いがよぎりました。指をずらして孔に隙間をつくり、半音を出すというその運指では、ジャズの(コードスケールによる)アドリブの細密なフレーズを奏でるのは、無理ではないかと。

それでも、諦めず知り合いの都山流の楽士にならってみました。

しかしアドリブするには至りません。

そして酷使した指はついに重い腱鞘炎におかされてしまいました。それは今でも完治していません。

そこで決心したのです、運指の楽な管を作ろうと。

まずは、木製のリコーダー、横笛、韓国の楽器テグムなどの構造や運指を調べました。

それらの一部を切ったり、孔を開けたりもしました。

また前述の教則本の著者にも連絡して、アドバイスを仰ぎました。彼は木管の尺八の発明者だそうです。

そうやって得た知識をもとに、塩ビ管を使い、何本も作って、吹いてみました。

最後に、前述の木製の尺八の孔を塞ぎ、新たな配列の孔を開けました。

そうして完成したのが、現在ステージでときおり演奏する、私の尺八なのです。

ただし、私の奏法は本来の尺八のそれではありません。ジャズの演奏はタンギングを多く必要とするからです。

それでも尺八を使ってジャズをするという夢はかないました。

次の夢は、そんな尺八と横笛によるビッグバンドをつくって、アンサンブルをすることです。さて実現するでしょうか。



フラジオ(倍音)が追はざりたるや管置きて嘉魚を捜せば岩根に尾見ゆ   (をさむ)