我が家の裏手の、古い用水路は、外来生物の繁殖や水質の悪化などにより、いろんな生き物を失いました。

しかし今年の冬のある朝のウォーキングの途中、懐かしいものに出逢いました。TVなどで見る以外では、少時に、見て以来のことです。

いつものように、水路のほとりを歩んでいたら、瑠璃色に、いや橙色にも映える小さなものが目に飛び込んできました。

そう、それはあの懐かしい鳥です。私は思わず「あ、カワセミ」と叫びました。

カワセミは、ひえびえと流れる水路のはたの薄茶色の芦の群のはしっこの一本に、まるで宝玉が溶け落ちたように、輝きを放ち、揺れています。

私は急いでデジカメを取り出します。その刹那カワセミは、二十メートルほど向こうの別の芦群(むら)へと、飛び移ります。

私はズームする間も無く、シャッターを切ります。そしてその場で画像をチェックします。

しかし茂みの中にかすかに覗くその姿は、カワセミと分かるように映ってはいませんでした。

それでも懐かしい鳥に会えたことに、心が満たされました。

我が街に、ジュエリーのような鳥の居る風景が、蘇りました。

消えてしまった他の生き物も、やがて戻ってくるかもしれません。

ここだけでなく、全国の街に、いろんな動植物が戻ってくるといいですね。




玉の水散らして杭に舞ひ戻るかはせみの嘴(はし)二魚のうごめく     (をさむ)