現在の私は武道を続けてきたから、同年齢の人に比べ体力にはいささかの自信がありますが、子供の頃は小児喘息を患い、体力に恵まれていませんでした。

私が通った小学校には、都会にありがちな狭いグランドがありました。そしてなぜかアスファルトが敷かれていました。

そんなグランドで毎年秋に、運動会がもようされます。

私は毎年50メートル走の着順がビリもしくは後ろから2着でした。それでもいつも真剣に走りました。

その年の運動会は小雨の中で行われました。

50メートル走が始まり、私達が駆ける番になりました。

ピストルの音が鳴ると、いつものようにトップに飛び出します。

だが体力の無い私は、この後次々に抜かれてゆくのです。

しかしどうしたことでしょう。皆が雨水で滑って倒れてゆくではありませんか。

私は慎重に足を回転させて、進みました。

そして2番にゴールしたのです。

ところが午後になって、雨が止んだら、担任の先生が50メートル走をやりなおす、と言いました。

私達のグループだけでなく、他に幾人もの転倒者が出たからです。

正式な競技は雨によって転倒者が出たからといって、その競技を無効にしないことや、その雨天に(強く)良い成績をあげる選手がいることが、脳裏を過ぎり、納得いかなかったのを覚えています。

当時の私は先生の指導に素直に従えない、駄目な児童だったのかもしれません。

尚且つしかめつらで話す先生を見て、なんだか悪者にされたように錯覚し、少々辛い思いをしました。

しかしそれも一つのフェアー精神のかたちであり、先生の教育方針であるから、それでいいのです。

あの日実力に合わぬ2着の成績を取っても、その後の人生が変るというものでもないと思います。

今ではほろ苦い懐かしい思い出になりました。




競り果てて洗ひし足や小滝かげ (をさむ)