「ハウスメーカー」と「工務店」そして「設計事務所(建築家)」 | 酒井設計ブログ

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■ 「ハウスメーカー」と「工務店」そして「設計事務所(建築家)」


□ 「ハウスメーカー」

【利点】:建てたい家のイメージがつかみやすい。

ハウスメーカーとは、住宅をつくる専門の会社のことです。住宅専門の工務店、建設会社と言えるでしょう。そして、設計、施工を1社で行う会社のことです。

簡単に言うと自動車を購入する場合と似ています。カタログを見ながら、間取り、仕様まで選んで、土地探し、資金計画、設計、施工、アフターサービスに至るまでトータルでサポートしてくれる会社です。住まいづくり全般にわたって営業マンの細やかなサービスが受けられるため3つの中でも一番建築主の負担が少ないと言えます。

ハウスメーカーでは、膨大な数の家づくりから得たノウハウをもとに、一般的に多数のニーズに応じた住まいを提案しています。言いかえると規格化された住宅です。工場生産された部材を使い、マニュアル化された工事監理の下で、均一な品質の住まいを供給しています。住宅の工法・構造には、木造軸組工法、木質パネル工法、2×4工法、鉄骨ユニット工法、コンクリートパネル工法などがあり、各社独自で開発した工法を採用しているのが特徴です。メーカーによっては、扱える工法・構造が限られているので注意してください。

例えば、鉄骨ユニット工法を得意とするメーカーに、伝統的な和風建築を依頼してもつくることが出来ません。イメージと違った住まいになってしまいます。ですがユニットなので工期が短くてすんでしまうというメリットがあります。早いものなら2~3ヶ月で住まいが完成します。

ハウスメーカーとの住まいづくりは、「豊富な商品からイメージに合った住まいを選ぶ」と考えると分かりやすいでしょう。モデルハウスやカタログによって建てたい住まいのイメージがつかめ、出来上がりの予想も可能です。提案された範囲内で選べばリーズナブルな住まいが実現できます。

ところが規格外になると、そのメリットが生かせなくなります。例えばプランニングも基本的には自由設計ですが、規格外のものを選べばオプション扱いになって割高になってしまいます。設計にきめ細やかな工夫が要求される高い天井や大きな部屋、難しい敷地条件など、個別の要望に応えることは、まだまだ苦手のようです。

「万人が納得するデザイン」が売りだったハウスメーカーも、最近では有名建築家とのコラボレーションをするなどデザイン性の高い住宅も続々と発表しています。

個性的なこだわりの住まいづくりへの期待が高まっているようです。

● こんな人向き

 ・とにかく早く住宅を建ててしまいたい
 ・カタログやサンプルを見ながら建てたい
 ・自分の好みのイメージが「○○風」とこだわりたい
 ・資金計画や各種手続きが面倒な人
 ・ブランド志向の人


□ 「工務店」

【利点】:住まいづくりの専門家。

工務店は、身近なところで頼みたい人に向いています。家づくりの専門店ですが、住宅だけではなく一般建築も行います。そして、設計部があれば設計をしてくれます。ただ、工事が専門なので設計が充実していません。

設計は外部の設計事務所に任せてしまう場合が多いようです。設計のプロではない大工さんや現場監督、営業担当が打合せをして設計意図を外部の設計者に伝えながら住まいづくりが進みます。この工務店の構造が見えていないと、打合せどおりの住まいが出来ない場合があるので注意が必要です。

工務店の仕事は住まいづくりに必要な材料を調達し、各職人や設備会社(電気・ガス・水道)を手配し、彼らをうまく取りまとめて住まいを完成させることです。依頼先が建築家でもハウスメーカーでも、実際に家を建てるのは工務店であり職人です。その意味では、どこよりも家づくりの技術が優れているのが強みです。設計よりも施工に力点を置く傾向が強いため、設計力の優れた工務店を見つけるのが難しいところです。工務店と言っても、棟梁が一人という小さな工務店から全国展開している工務店まで規模はさまざまあります。

工務店とは一般的に、
 1 設計・施工を請け負うところ
 2 建築家と組んで施工のみを行うところ
 3 ハウスメーカーの下請けしかしないところ
 4 建売住宅の販売を行うところ

などあります。また、以前に材木店をしていた工務店は、木材の仕入れや扱いに強いなど、元大工・元不動産屋といった会社の前身から得意とする分野が違います。いずれにしても工務店の色を決めるのは社長(親方)の考え方にあります。親方に会って話を聞くことが出来れば、家づくりに対するこだわりや、職人たちの様子が伝わって来るはずです。

住まいの工法や構造は、木造軸組み工法や、2×4(ツーバイフォー)工法など木造住宅を得意としているところが全体のおよそ8割、中には独自の仕入れルートを持ち国産材料や地場産材を用いた、こだわりの木造住宅を手がける工務店もあります。他にも高気密・高断熱住宅を取り入れた住まいなど、住宅の性能面を売りにする工務店も増えてきています。地元密着型でスピーディーな対応が期待できる工務店は、気軽に相談できる身近な存在となっています。アフターケアやリフォームの相談、簡単な修繕まで、長く付き合えるパートナーを必要としている人に合っています。

●こんな人向き

 ・住まいづくりを一緒に行い楽しみたい
 ・匠の技や建築素材にこだわりたい
 ・内装をDIYするなど自分も仕上げに参加したい


□ 「設計事務所(建築家)」

【利点】:ライフスタイルや住まい方を個性豊かに提案します。

設計事務所は、個性に合った住まいづくりが出来るのが特徴です。建築の設計を専門に行う事務所のことです。建築家と言われる人たちは、この設計事務所に属します。また建築家と言われる人でも一級建築士などの資格を持っていない人もいるので、資格があるかどうかの確認が必要です。

ちなみに建築士という資格は、一級建築士の他に二級建築士と木造建築士があります。住宅を設計する人は、おもに二級建築士を取得しています。

また、工務店やハウスメーカーの営業の人でも二級建築士を取得して、普段の仕事に役立てています。

建築家の仕事とは、住まい方(ソフト)を建築物(ハード)へと落として行く専門家とも言えます。住まいの空間づくりを通して、住まい方を独自に提案しようと試みるため、建築主の要望とは違った設計をする場合があるので注意が必要です。良い設計者は、建築主の要望を専門家として整理し、図面に落とし込むのが基本です。また、多くの建築家は、建築主のイメージを超えた意外性のある設計を目指しているため、ハウスメーカーや工務店では得ることのできない提案が得られることでしょう。完成後のサプライズを楽しめる人には、建築家との住まいづくりはきっと有意義なものになることでしょう。

建築家は単に設計をする人と思われがちですが、工事の監理も重要な仕事です。明確に独立した立場で監理ができるのは、3者の中でも建築家だけでしょう。また建築家が最も力を発揮するのは、狭小地や変形地など厳しい敷地条件の場合です。面積や高さの制限などの建築制限に対して、発想の転換や斬新なアイディアで、それらの条件を個性として生かし柔軟な対応をします。扱える構造・工法についても、建築家によって得意、不得意はあるものの、基本的にはオールマイティです。特に、構造や工法にこだわりがない場合は、予算や敷地などに見合った適切な工法を提案します。

建築家との住まいづくりは、打合せによる積み重ねがポイントです。プラン、デザイン、仕上げ材の選定まで、ひとつひとつを一緒に作り上げていくため、建築主にもかなりの時間とエネルギーが求められます。そして、住まいづくりにかかる設計の期間は、3つの中でも最長となります。打合せに時間をかけるので仕方ありませんが、時間のない人には向いていません。また、独自に設計しているので、全く同じ住宅がないのでイメージが分かりづらいという欠点があります。建築家と住まいのイメージを共有できるようにするためにはコミュニケーションが欠かせません。相性のいい建築家を見つけることが、快適な住まいへのファーストステップと言えるでしょう。

● こんな人向き

 ・変形地や狭小地など敷地の条件が厳しい
 ・個性的な家を建てたい
 ・新しいライフスタイルに憧れている
 ・住まいづくりの設計やプロセスが大切だと思う
 ・住まいづくりに時間をかけて、じっくりと取り組みたい


□ 設計事務所の欠点とは?

住まいづくりをする上で設計事務所と工務店との関係が、どのような関係にあるのかを知っておかなければなりません。設計事務所が、工務店の「下請け」になっている場合があるからです。「下請け」というのは発注者が建築主本人ではなく、工務店が発注者となり設計を依頼するので、設計意図が伝わりにくくなることがあるからです。

こだわりの家づくりでは、設計事務所を直接見つけることが出来て、なお良い工務店と出会えたなら、住まいづくりを効率良く進めることが出来ることでしょう。


□ 「下請け」になる設計事務所

「下請け」になる設計事務所の種類には、2つあります。「デザインを売る設計事務所」と「工務店の言いなりになる設計事務所」です。

「デザインを売る設計事務所」の場合には、工務店自身ではデザイン力がないため設計事務所にプランをつくってもらいます。そしてプランから仕様や見積りなどを行い、住まいづくりを進めていきます。ただし、プランを買ってきたものなので工務店側で修正を加えていくと、どんどんカタチがくずれてしまい、いい家にはならない場合があります。これこそ設計者の意図が欠け落ちてしまう典型的な例です。

次は「工務店の言いなりになる設計事務所」です。打合せを工務店の営業が行い、その営業サイドの力量で設計を行ってしまうため、まとまりのない住まいになります。そして設計者の力が、まったく発揮されずに設計が進むので、バランスのない使いづらい住まいになってしまう事が多いのです。


□ 本格的な「設計事務所(建築家)」を見極める

「下請け」になっている設計事務所は、元請けになったことがないので、あまり表に出てくることはありません。また仕事を工務店から請けているので工務店よりも表に出てしまっては、その後の仕事が来なくなってしまうからです。

では、どのようにしたら、理想の建築家と出会えるのでしょうか?

最近の傾向として、力のある建築家は設計・施工をするという「工務店」へとシフトしています。特に住宅の設計では、建築主の要望が多岐にわたるので、設計図に表現されないものも含まれて来ます。そのため、建築主の要望が現場に伝わらなくなってしまうと、家づくりがうまく進みません。

こだわりの家づくりでは、建築家(設計者)自らが、建築主と打合せをし、図面を作成して、建築家がつくるというシンプルな構造が理想です。このように、設計事務所自体が工務店化して来ているので、見つけるのが簡単になってきました。

現在では、たくさんのハウスメーカーや工務店、そして、建築家の中から自由に選べる時代になって来ました。

次回は、「良い住宅メーカーの見つけ方」についてご紹介します。

酒井利美