「なかなか頂点に着かないね」
15分の観覧車．
地上の景色が徐々に小さくなる．
同時に見えていなかった景色が
広がり始める．
高みに行かないと
見えないものはたくさんある．
「もう頂点じゃない？」
ここが頂点か．
すべてを見渡せる．
でもその時間はつかの間．
次第に下り始める．
「下りだすと，何か早く感じる」
「人生みたいだ」
「人生？ ふふっ，そうね」
見えていたものも
徐々に見えなくなってきた．
地べたが迫ってくる．
もう終わりなんだな．
地上に降り，上を見上げる．
少し前まで自分は
あそこにいたのか．
遊園地は悲しみを覆うように
明るさを作っていた．
子供たちは笑っている．
楽しみに包まれた未来を思って．
「ねえ，アイス食べよう!」
12月なのに暑い．
花はとっくに
咲き終わっているのに．
自分は再び巨大な観覧車を
見上げた．
それなりに楽しい時間だったのかな．
でももう戻ることはないか．
ありがとう．