2024年5月11日
1989年「岡嶋二人」は解散しました。
いきなり何だ?と思われるでしょうが、知る人ぞ知るミステリ作家の「岡嶋二人」
(おかじまふたり)です。
しかし知らない人は、作家が解散とは何だ?と思われるのも至極当然です。実は知る人ぞ知る、二人で一人の作家だったのです。エラリークイーンの日本版ですね。
今回投稿することに至った、いつものフレーズ「深い理由と浅いワケ」を、最初から説明していきましょう。
例によって、こないだ、新聞を読んでいたらこういう記事が目に入ったのです。
ホントに目に入ると角膜に傷が付いて結膜炎になり、近くの眼科に駆け付けることになりかねないので、正確に事実を描写吐露すると目に入ってはいません。
「目に留まった」と書いた方が客観的事実に即した表現だと今気付いたので、お詫びして訂正いたします。
いらんことを書いているとまた長くなるので、新聞記事に戻ります。
岡嶋二人は「井上泉」「徳山諄一」のコンビで、「焦茶色のパステル」という作品で第28回江戸川乱歩賞を受賞して、推理小説作家として1982年にデビューしました。
井上泉さんは、岡嶋二人を解散した後に「井上夢人」のペンネームで、現在も作品を発表し続けています。新聞記事は、その井上泉さんが書いた31年前の「プラスティック」という作品が、このたび本屋大賞の「発掘部門」で受賞されたというものです。
私はリアルタイムではないものの、岡嶋二人作品をずーっと収集し愛読していたのでこの新聞記事を読み、感慨深いモノがありました。
これが、私が所有している井上夢人さんの単行本です。
岡嶋二人作品については、愛読し始めた時には、既刊の単行本がたくさんの文庫本になって出版されていたので、当時出ていた文庫本と収集可能な単行本を買い漁って
読破しました。
「クラインの壺」は、岡嶋二人名義の最終作品です。たしかNHK でドラマ化されたのを観た記憶がありますが、現在のVR(バーチャルリアリティ)をトリックに取り入れたりしていて IT や AI を先取りしているような作品でした。
今回投稿するにあたって何冊か読み返してみましたが、改めて気付いた伏線のプロットの構成や、あっと驚くトリックが斬新で、今読んでも十分に面白い作品群です。
ここで冒頭にアップした本に戻りますが、この「おかしな二人『岡嶋二人盛衰記』」には、岡嶋二人が誕生してから解散するまでの経緯が書かれているのです。
ペンネームの元になっている「おかしな二人」というのは、ニールサイモンの有名な戯曲の題名です。ちなみにニールサイモンは、こないだ投稿した三谷幸喜さんのコラムでもたびたび取り上げられるように、その筋で知らないヒトはいないという作家でもあります。
ニールサイモン原作の方もいいんですが、井上夢人さんが書いた「おかしな二人『岡嶋二人盛衰記』」という作品が、岡嶋二人作品の愛読者にとっては興味深くて面白いんですね。
二人で推理小説を執筆するのは一体どうやっていたのか、世間で疑問に思われていたことの真実が、詳細に執筆してあります。
当時のインタビューでは「一人が一行書いたら次の一行を交代しながら書いている」などと答えていたらしいですが、ホントは全然違っていたのです。
また井上さんは、当時まだ一部のマニアしか使っていなかった NEC の初期PCを駆使してPC 通信(この言葉自体が今やもう過去の遺物ですね、E-mail などというツールがまだ無かった頃なのです)を試していたり、デジタル技術を作風に取り入れた先駆者だったのです。
このことは、岡嶋二人の最終作品である「クラインの壺」や、解散した後に井上夢人として発表された作品を読んでいるとよく分かります。
今や飛ぶ鳥を落とす勢いで、出版する本がすべてベストセラーになったり映画化されたりしている「東野圭吾」さんや、半沢直樹シリーズで売れっ子となった「池井戸潤」さんも、もともとは江戸川乱歩賞受賞をきっかけに文壇デビューされています。
このところ井上夢人さんの新作は発表されていないようなので、今回の受賞をきっかけに新作を執筆されて発表するが楽しみです。
まだ、一度も岡嶋二人作品を読んだことのないヒトは、騙されたと思ってまず乱歩賞受賞作品から読んでみて下さい。『全身真っ白の猫である』ことは請け合いです。
今回の投稿は、当初ここまで書いてから次の画像をアップしておしまいにしようと
画策していましたが、そのままでは「?」のヒトも多少いるかもしれないので、
蛇足で無粋で余計なお世話かもしれませんが、オチまで書いておきます。
さて、どのくらいのヒトがオチを読まなくても理解できたでしょうか?
全身真っ白 = 尻尾まで白い = 尾も白い = 面白い (別に猫でなくてもいいんですが)
なお、相方だった徳山諄一氏は、2021年に残念ながら逝去されました。