日曜日の夜、パリオリンピック、女子スケートボードをTV生観戦しました。吉沢恋選手が金メダル、赤間凛音選手が銀メダルを獲得するという、日本国民として嬉しい結果になりましたが、私自身はそのドラマチックな展開の中にメンタルの強さと果敢に最高なものを追求するアスリートの矜持のようなものを見て取れて、感動しました。もちろん、私自身にはスケートボードの経験もなく、演技やテクニックを見て評価するようなこともできないド素人ですが、そんな私にとってさえも、見応え十分なものでした。


試合経過などは報道などにすでに出ているのでここでは記しませんが、私が特に感動したのは、吉沢選手のトリック4回目の演技です。ここまで同じ日本人の赤間選手が暫定1位で、ここからの逆転はかなり難しいように思えました。演技の機会はあと2回、金メダルを取るには最低でも92.81点以上の演技を1回は成功させることが必要です。この日のこれまでの最高点はブラジル選手の出した92.88点、また、仮に吉沢選手が94点を出しても、赤間選手がその後88.5点を出せば再逆転される、とい不利な状況です(赤間選手は1回目の試技で92.62点を出しています)。

一方で、80点くらいでも1回成功させて得点を取れれば銀メダルは確実ですが、2回とも着地に失敗(得点がつかない)すれば銅メダルさえ取れないことになります。私は点数計算をしながらこれを見ていて、「自分ならまずは安全確実な演技で80点くらい取って銀メダルを確保し、最後の試技で最高点にチャレンジするだろうな…」と思っていました。実際、吉沢選手はそれまでの3回中、2回は着地に失敗して得点ゼロでしたから、そもそも得点を出すこと自体、それほど簡単ではないように見えたのです(3回目のまでの時点で、決勝に残った8選手の24回の試技で、成功して得点がついたのは9回。5回の試技中、ベスト2回の得点がつきます)。


ところが、吉沢選手は4回目の試技、当たり前のように最高難度の技に挑み、これを成功させたのです。得点は、何と96.49点!

この日の最高得点であることは言うまでもなく、男子でも滅多に出せない、とんでもない高得点でした(翌日の男子決勝の最後の最後で、堀米選手が97.08点という、これまたとんでもない最高点を出して逆転金メダルを取ったのは報道のとおりです)。

これを成功させた瞬間、得点云々よりも、自分の演技を成功させた満足感があったのでしょう、吉沢選手の両手を上げ、目を閉じた表情とポーズが、何と美しかったことか。とても14歳とは思えない、気品と威厳に満ちた、素晴らしいものでした。


振り返って、私のような俗物は、点数計算をして、関係者や国民の期待にも思いを致しつつ、まずは銀メダル以上を確定して、それから…などとレベルの低い打算をしてしまうわけですが、やはり真のアスリートというのはそんなことは考えないんですね。

ひとり深夜にTVの前で思わず拍手をし、涙ぐみながら、自分の小ささに少し恥ずかしい思いをした、オリンピック観戦でした。