このところ、仕事で法律関連の実務がなかったのですが、今日久しぶりに会社が訴訟当事者になりました。
社員Aが銀行のATMに置き忘れていた現金3万円入りの封筒を持ち去り、その後、封筒の中の現金を費消した、という事案がありました。事案発生後3ヶ月ほどして、防犯カメラにAらしき者が映っていたことから警察に事情聴取を受け、本件が発覚しました。被害者とAとが話し合って、謝罪した上で倍額の6万円を支払う(3万円+慰謝料)ことで示談が成立し、被害者がAの処罰を望まないことを言明したこともあって、事件は不起訴となりました。
しかし、社内規律違反に問われてAはほどなく懲戒解雇になりました。Aはこの懲戒解雇処分に不満を持ち、会社の当該処分は裁量権の範囲を逸脱しているので無効だ、との訴えを起こしました。(まるで行政事件訴訟法30条みたいですよね!)
社内規律違反と処分の基準を調べてみると、仮に示談が成立して不起訴となっていても、10年以下の懲役に相当する行為(例えば窃盗など)だと懲戒解雇、1年以下の懲役に相当する行為(例えば占有離脱物横領など)だと短期停職、とされています。
つまり、人事部はAの行為を窃盗と見做したということです。他方、Aは自分は窃盗をした覚えはない、放置されていた封筒を持ち帰り、あとで現金とわかって使ってしまったのだから、これは占有離脱物横領だろう、懲戒解雇は酷過ぎる、短期停職があるべき処分だ、という主張をしています。
ここまでくると、予備試験受験生には覚えのある論点、ATMに置かれていたその封筒には被害者あるいは銀行の占有が及んでいたか、という話になります。担当者が法務部+顧問弁護士(あまり信頼できない…と個人的には思ってます)に相談したところ、❶そのATMコーナーはオープンスペースにあり、人の往来も激しい場所なので、(列車内と同じで)銀行の占有は及ばないだろう、❷被害者の占有については、どこに置いてあったか、取りに戻ってきたか、戻ってきたとして、いつ戻ってきたか、などを勘案する必要があるところ、❸封筒はカウンターの上に置かれており、被害者は比較的短時間で気付いて取りに戻ったが、すでにAが持ち去った後だった、❹カウンターの上に置き忘れて、短時間で取りに戻ったのであれば、まだ被害者の占有が及んでいると言えるのではないか、というものでした。また、被害者と示談が成立していて処罰を望んでいない、Aは被害者に謝罪をしている、ということはAに有利に働くが、被害者に謝罪したのは事案が発覚した後に示談にするためであって反省しているわけではない、と主張することは可能である、いずれにしても本件の帰趨は裁判官の心証次第であり、勝訴も敗訴もあり得る、とのことでした。
私は法務部ではないのですが、Aは慰謝料も請求しているので、経理にも相談があったものです。
判決が出たら、また書きます。