将棋を地政学で考える13 棋譜解説「エアーパワーの将棋は速い攻めの実現がカギ」 | アイデス山口 iラヴ将棋「下手の中飛車→風見鶏β」

将棋を地政学で考える13 棋譜解説「エアーパワーの将棋は速い攻めの実現がカギ」

将棋は宇宙だ!
アイデス山口@アプリde将棋入門です。

地理的条件で国家の軍事などを考える地政学を、将棋に応用して考えてみよう、というコラムです。
地政学自体、付け焼刃の知識ですし、あくまで私個人的な見解ではありますが、
最終的には、棋力アップの方向にも繋がれば、と思っておりますので、よろしくお願いします。

前回は稲庭将棋というイレギュラーな戦術に関して、地政学的に考えてみました。
今回はまた定跡形に戻って、横歩取りを考えてみたいと思います。
横歩取りは、お互いにエアーパワーの将棋になりやすく、足の速い駒をいかにうまく使うか?が焦点になります。
基本は、互いに平地の将棋と考えても良いでしょう。




後手は3三角と構え、先手は2筋に飛車を戻すオーソドックスな将棋になりました。
ここから飛車、角、桂をどううまく使えるかですが、現時点ではまだ判断は難しいですね。
後手は、飛車が2筋に戻る1手損をついて、積極的に仕掛けます。



先手が▲4八銀としたところをついて、飛車を追い込みました。
後手は、角交換から△4四角で飛車へ遠距離射撃。△2六歩で拠点を作り、角銀交換で銀を手に入れて、飛車を取りにいきました。
4八の銀が邪魔で飛車は逃げることができません。

後手は中住まい玉になっており、左側の金か銀が動けば、それなりの囲いになりそうですが、先手は居玉のまま。
左金は離れ駒になっているし、うまく後手に駒組みを乱されてしまっています。
航空爆撃で橋や道路を壊されてしまった、そんなイメージでしょうか?



飛車銀交換となり、取ったばかりの飛車で王手です。
左側からの攻めも嫌ですが、右側に歩の拠点を残してしまったのもかなり大きい。簡単に振り払うのは難しそうです。
拠点の歩は、オスプレイのように拠点から兵士を供給するのか、と金になって自らが戦力となるのかはわかりませんが、
速さが肝のエアーパワーの将棋としては良い進み方かと思います。

左右挟撃の態勢が整いつつあります。

先手は攻めの態勢もできていないので、カウンターも難しそうですし、しばらくは防戦になりそうです。


 

先手の反撃。角2枚で8筋にいた龍を追い払い、反対に飛車を8筋に投入しました。
次に▲8一飛成で桂を取って、左側から玉に迫っていきます。

先手にもチャンスは出てきた、と思いますが、そのために投入した角の働きが不満。
9二の角は相手陣まで利きが通っておらず、通ったとしてもそこまで脅威ではありません。
6四の角も右側を遠距離射撃しているのですが、1枚の攻めでは速い攻めはなさそうです。
飛車、角、桂の働き、が重要な将棋なので、角2枚投入したわりには・・・という状況かと。



先手は龍、後手は銀を取ってと金を相手陣に残しました。
良い勝負に見えますが、玉の逃げ場所に大きな差があります。

先手、後手ともに、拠点を作られたので、逃げるとすれば、拠点から遠ざかるように逃げるわけですが、
後手は、2二の銀が3三に上がれば囲いになるので、平地に城を築くことができそうなので、逃げ道は確保されています。
対して先手は、角、桂、香と守備力が高い駒がおらず、龍の利きが届いているのはプラスですが、龍が動かないことが前提になるので、攻めに影響が出そう。

後手は城があるので逃げこめば一筋縄にはいかないですが、先手はどこに逃げても隠れる場所もない平地。まだまだ差があるとみるべきでしょう。



先手は龍を追い返すために、角2枚で守りましたが、それでも左側に穴があり、先手は金を打ち込みました。
後手は、ピンポイント爆撃に成功して、先手から左側の平地に逃げることも封じました。

先手は、桂馬が跳ねて、玉頭を狙っていますが、9筋の龍もそれほど利いておらず、最悪玉は右側に逃げこむことができるので、勝負は決したように思えます。



上図は投了図。後手は左から玉を狙い、右側からもと金、龍が迫ってきました。
この龍は元々左側にいたもので、1度追い払われて反対側に活きましたが、最終的には詰みに活かされています。

先手も桂馬を使って、最後の抵抗を試みましたが、右側に逃げられて万事休す。

エアーパワーの将棋は、「足の速い駒をうまく使った方が効果的」と考えていましたが、
今回は右側に作った歩の拠点が最も効果的だったように思います。
相手陣に基地を作ったような感じで、それが速い攻めを実現させました。


エアーパワーの将棋は、「速い攻めを成功させた方が勝つ」というのを1つの定義として考えてもいいのかもしれません。

あと「平地に城を築く」というのもこれまでになかったもので、
エアーパワーの将棋でも相手に速い攻めがなければ、囲いを作って入れてしまう、というのも効果が高い作戦に見えました。


次回も棋譜解説を行いますが、そこで1度区切りをつけて、将棋の地政学を総括してみたいと思います。