日本百名山、浅間山(標高2568m)は現在、噴火警戒レベル1で火口から500m地点の前掛山(標高2524m)。
頂上まで行けるとあって、登山愛好家や地元住民らが山登りを楽しんでいる。

【前掛山の急登から見渡す外輪山と
アルプス】
天狗温泉浅間山荘を登山口とする「火山館コース」は、鳥居や修練の滝、石碑や石仏など山岳信仰の遺構が数多く残り、霊峰浅間山の古い歴史や〃活きた火山〃を感じられる。
登山口から前掛山頂上までは往復約8時間(標高差約1114m)。
一ノ鳥居、二ノ鳥居、不動の滝、カモシカ平、火山館、湯の平、賽の河原などが見どころ。
◇浅間山荘の登山口から火山館へ◇
5月8日山開きの日、登山愛好家や地元住民ら約100人が登頂した。
登山口の大鳥居をくぐり、褐色の蛇堀川沿いに新緑の木々をぬけ、一ノ鳥居に着いた。
スミレなどの山野草を楽しみながら進むと不動の滝に着く。落差12mの滝は真横からも眺めることができて爽快。
高齢の人など地元の登山者らは、まず一ノ鳥居や二ノ鳥居を目指し「できれば火山館まで」を目標に登っていた。

【一ノ鳥居】

【二ノ鳥居】


【不動の滝】
小諸市の篠原一さん(79)夫婦は「植物を見ながら歩くのが好き。芽吹きがまた楽しい」と話しながら、娘や孫ら三世代で仲良く登った。前を歩く70代の地元女性が小さな花を見つけると、篠原さん夫婦は「それはエイザンスミレ、これはショウジョウバカマ」と教えていた。

【エイザンスミレ】

【ショウジョウバカマ】

【スミレ】
二ノ鳥居を過ぎ、急坂を登るとギザギザに尖った牙山(標高2111m)の姿が見えてくる。
カラマツ林の坂を抜け視界が開けると、明るく開放的な「カモシカ平」があらわれる。
切り立った岩山に草原や膝丈ほどの笹の群生地が広がる雄大な景色。カモシカ平周辺では、天然記念物のニホンカモシカを見ることができるという。
山々の間からは雪の筋を残した前掛山が顔を出す。
道すがら、カモシカの姿はなかったが、ニホンジカが樹皮をかじった生々しい跡がみられた。
火の山らしく辺りに硫黄の匂いが漂ってきた。

【火山館の近く硫黄の匂いが漂う。
奥は牙山】
赤く錆びた川が見えてくると、浅間山火口から2・3㎞地点の火山館までもう一息。
青空の下、川の赤に岩山の草原、残雪のコントラストが見事。
火山館に着くと家族連れらが弁当を広げたり、原っぱで寝そべって休んでいた。
小諸市立火山館は、自然保護と遭難防止対策の拠点で、バイオトイレも設置され登山者の休憩場となっている。
神田恵介館長(71)は「コロナ前は500人以上、多い時で800人ほどでにぎわう山開きだが、今年は控えめ」と話す。
浅間山は、秋の紅葉シーズンが人気だが、この時期は平日で20人、土日は50から100人ほどが訪れる。
最近は、近隣の若い人やひとりで登る女性も増えているという。
70代の地元女性は「きょうはここまで」と話し「ゆっくり歩き、小さな花に初めて気付けた。小さな感動。心がからっぽになれる」と笑顔をみせた。
◇火山館から前掛山頂上◇
火山館近く浅間神社で参拝し、湯の平、賽の河原、前掛山へ。

【前掛山頂上から見る釜山】
浅間山と断崖絶壁の外輪山に囲まれた絶景「賽の河原」。

【賽の河原】
辺りは森林限界となり、異世界への入口に立ったかのよう。
いよいよ砂礫の前掛山山腹の急登を登る。
途中、後ろを振り向くと北アルプス、中央アルプス、八ヶ岳などの雄大な景色が広がる。
まるで月面に降り立ったかのような砂と岩だけの世界、浅間山本峰の「釜山」が姿をあらわした。
シェルターをくぐり、釜山を横目に火山灰土の稜線を20分ほど進めば、前掛山の頂上。釜山がすぐそこまで迫り、活火山の力強いエネルギーを感じた。
◇下山、カモシカならぬニホンジカに遭遇◇

【火山館にニホンジカ】
下山中、湯の平で獣の姿を見たが、残念ながらカモシカではなかった。火山館に着くと、ニホンジカの群れが、館のすぐ近くに姿をあらわした。
「夕方になるといつも出てくる」と神田館長。
「ここ数年、ニホンジカが増え、カモシカの生息地は減少している。ニホンジカは何でも食べてしまう。たくさんあった高山植物が、ここ3年でほとんど見られなくなった」と嘆いていた。